代表民主制のもとで、住民の意思を行政や議会の構成へ反映させる唯一の正式な回路が選挙である。誰が投票でき、誰が立候補でき、票をどう数えて誰を当選人とするのかが恣意的に運用されれば、選ばれた代表の正統性そのものが揺らぐ。そこで公職選挙法は、選挙権・被選挙権の要件から、選挙人名簿の調製、立候補の届出、選挙運動の範囲、投票・開票・当選人の決定、争いが起きた場合の選挙争訟まで、選挙の全過程を細かく規律している。これらの事務は選挙管理委員会が管理し、投票管理者・開票管理者・選挙長といった選挙事務管理者が現場の各局面を担任し、各段階に立会人を置いて公正を担保する。自治体職員にとって選挙は、定期・臨時に必ず巡ってくる大規模な法定受託事務であり、一つの瑕疵が選挙の効力を左右しうる緊張度の高い実務である。
選挙の種類と地方選挙
選挙は、選ぶ公職によって区分される。地方公共団体では、知事・市区町村長を選ぶ首長の選挙と、都道府県議会・市区町村議会の議員を選ぶ地方議会議員の選挙があり、いずれも住民が直接投票で選ぶ直接選挙である。これらは多くが任期満了に伴って定期的に行われるが、首長の辞職・失職や議会の解散などにより臨時に行われることもある。複数の地方選挙の期日を統一して同時に行うのが統一地方選挙であり、選挙事務の効率化と投票率の確保を狙いとする。国政選挙(衆議院議員総選挙・参議院議員通常選挙)も、現場の管理執行は市区町村の選挙管理委員会が担うため、地方の選挙事務と密接に関わる。
選挙の区域と前提となる資格
選挙は、議員を選出する単位として定められた選挙区を枠組みとして行われる。市町村議会議員の選挙では原則として市町村の全域が一つの選挙区となり、都道府県議会議員の選挙では郡市の区域などを単位に選挙区が設けられ、人口に応じて議員定数が配分される。定数配分が人口と釣り合わなくなると一票の格差が生じるため、定期的な点検と是正が欠かせない。
選挙の前提として、有権者であることを公的に確認する必要がある。投票できる資格である選挙権と、立候補できる資格である被選挙権の要件は公職選挙法が定め、選挙権をもつ者は選挙人名簿に登録される。投票は名簿への登録を要件として行われ、名簿の正確性が選挙の公正の土台となる。
立候補から選挙運動まで
選挙に出ようとする者は、定められた期間内に立候補の届出を行う。届け出た候補者には、誰が当選に値するかを有権者へ訴える選挙運動が認められるが、その方法・期間・費用は公職選挙法によって細かく制限される。候補者間の資力差が結果を左右しないよう、ポスター掲示場の設置や選挙公報の発行、政見放送といった選挙公営の仕組みが用意され、公費で選挙運動の一部を支える。許された範囲を超えた行為は選挙犯罪として処罰の対象となる。
投票・開票・当選人の決定
選挙の当日(または期日前)に、選挙人は投票所で投票を行う。投票所は投票管理者と投票立会人のもとで運営され、その経過は投票録に記録される。投票が締め切られると、各投票所の投票箱は開票所に集められ、開票管理者と開票立会人のもとで票の点検・有効無効の判定・計算が行われ、その経過は開票録に記される。
開票によって確定した各開票区の得票は、選挙会で集計される。選挙会を主宰するのが選挙長であり、選挙会立会人の立会いのもとで得票総数を確認し、法定得票数を満たした者のうちから当選人を決定する。市区町村議会議員の選挙のように開票区が一つの選挙では、開票管理者が選挙長を兼ねる運用が広く行われる。当選人決定の経過は選挙録に記載され、決定された当選人には当選証書が付与される。
選挙の効力をめぐる争いと記録の意義
選挙の手続や当選人の決定に瑕疵があると考える者は、選挙争訟・当選争訟によってその効力を争うことができる。このとき、選挙が法令に従って公正に行われたかを検証する一次資料となるのが、投票録・開票録・選挙録の三層の選挙関係の記録である。各層の投票数・得票総数が整合するか、立会人の署名があるか、当選人決定の手続が適正かが、これらの記録に基づいて判断される。記録の正確な作成と保存は、選挙の公正を事後的に担保する最後の砦であり、選挙事務に携わる職員の基本的な責務である。
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