選挙人の一票が現実にどのように行使されるのかを定めるのが投票という行為であり、選挙権を具体化する核心の手続である。公職選挙法は、選挙の当日に自ら投票所へ出向いて行う方法を原則としつつ、当日投票が困難な選挙人のために期日前投票や不在者投票、国外居住者のための在外投票、心身の故障により自書できない者のための代理投票、視覚障害者のための点字投票などの方法を整備している。さらに、交通至難の地などで投票日を繰り上げる繰上投票や、天災等で投票そのものを後日に延期する繰延投票といった特例も設けられる。実務では、投票管理者と投票立会人のもとで本人確認・投票用紙の交付・投函が厳格に管理され、投票の秘密の保持と二重投票の防止が運用上の要となる。
投票当日主義とその例外
公職選挙法は、選挙人が選挙の当日、自ら投票所に行って投票する投票当日投票所投票主義を原則とする。もっとも、仕事や旅行、入院等で当日の投票が困難な選挙人のために、期日前投票や不在者投票が認められ、国外に居住する選挙人には在外投票の制度が用意されている。これらは原則の例外として要件と手続が法定されている。
自書が困難な選挙人への配慮
心身の故障その他の事由により自ら候補者名を記載できない選挙人については、投票管理者が定めた者が本人に代わって記載する代理投票が認められる。視覚障害のある選挙人は点字によって投票する点字投票を行うことができる。これらは投票の機会を実質的に保障するための制度である。
投票の実施体制(場所・区域・記録・従事者)
投票という行為を現実に成り立たせるのは、それを行う場所・区域、結果を残す記録、現場を仕切る人という運営の体制である。市区町村は投票事務の単位として投票区を設け、原則として投票区ごとに一つの投票所を置いて選挙人を割り当てる。投票区は投票を行う単位、開票区は集計を行う単位という階層関係にあり、選挙人がどの投票区に属するかは住所により定まる。投票所は選挙管理委員会が告示で指定する施設で、投票区ごとに一か所が原則であるが、複数の投票区の選挙人が利用できる共通投票所が設けられる場合もある。投票所数の削減や高齢化を背景に、移動期日前投票所やバリアフリー化など投票機会を確保する工夫が各選管で進められている。
投票所の運営は、現場責任者である投票管理者と、その公正を第三者の目で監視する投票立会人のもとで行われる。投票管理者は投票区ごとに選挙管理委員会が選任し、投票所の開閉、本人確認、投票用紙の交付、投票箱の管理、秩序維持までを統括する。代理投票の可否や投票所の閉鎖時刻の確定といった判断は、投票立会人の意見を聴いたうえで決する運用が法定されている。投票立会人は各投票所に原則3人以上5人以下が置かれ、投票箱のすり替えや本人確認の甘さといった不正を外部から確かめる監視役を担う。同じ監視役でも、対象とする手続が開票か選挙会かによって開票立会人・選挙会立会人と分かれる。
これらの体制のもとで処理された投票事務の経過は、投票管理者が投票所ごとに投票録へ記録する。投票録には投票の開始・終了時刻、投票総数、代理投票や点字投票など特別な取扱いの件数などを記載し、投票立会人が署名する。投票箱とともに開票所へ送致され、開票の前提となるほか、選挙の効力が争われる選挙争訟において投票手続の適法性を立証する一次資料となる。
投票管理者職務代理者
投票管理者職務代理者とは、投票管理者が投票日当日に急病・事故等で職務を行えなくなり、または欠けたときに、その職務を代わって行う者である。投票事務を中断させないため、投票管理者と同じく当該選挙の選挙人のうちから選挙管理委員会があらかじめ選任しておく予備の職である。代理者は投票管理者が現に職務を行えなくなった時点で職務を代行し、投票立会人の選任、投票箱の管理、投票録の作成といった権限をそのまま担う。あくまで投票管理者不在の場合の予備であり、常時投票事務を監視する投票立会人とは役割が異なる。
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