市区町村とは、市町村に東京都の特別区を加えた、基礎的な地方公共団体の総称である。「区」が指すのは特別区であり、指定都市に置かれる行政区は含まない。
市町村だけを数えると、東京23区に住むおよそ970万人が基礎自治体の集計から抜け落ちる。特別区は地方自治法上は市町村と別の特別地方公共団体だが、公選の区長と区議会を持ち、住民記録や福祉などの事務を市とほぼ同様に担うため、住民基本台帳や国勢調査をはじめとする統計・名簿の実務では特別区を含めた「市区町村」という総称が使われる。その数は1,718市町村に23特別区を加えた1,741である。紛らわしいのは「区」の中身で、市区町村の区は特別区だけを指し、横浜市や大阪市のような指定都市の行政区は市の内部組織にすぎず数に入らない。これとは別に東京都の文書では「区市町村」と区を先頭に置く表記が慣例であり、国の言う「市区町村」と同じ範囲を指す別表記である。法令の条文はあくまで「市町村」と書き、特別区には市に関する規定を適用する(地方自治法第283条第1項)という構造になっている。
市町村・市区町村・区市町村——三つの表記の使い分け
法令用語としての主体区分は「市町村」と「特別区」であり、地方自治法は特別区を特別地方公共団体と位置づけたうえで(第281条)、原則として市に関する規定を適用する(第283条第1項)。これに対し「市区町村」は、両者を一括して扱う統計・システム・名簿の実務から生まれた総称で、総務省が定める全国地方公共団体コードでも特別区は市と同じ並びで市区町村コードを持つ。「区市町村」は東京都庁の文書の慣例表記で、都にとって特別区が第一の相手方であることの現れである。通知の宛先や調査対象の範囲を書くとき、どの表記を使うかで特別区が入るかどうかの解釈が割れることがあるため、定義規定や注記で範囲を明示するのが安全である。
同じ「区」の別物——特別区・行政区・総合区
特別区は公選の区長と区議会を備えた基礎的な地方公共団体であり、課税権も条例制定権も持つ。一方、指定都市の行政区は市長の権限に属する事務を分掌させるための市の内部組織で、区役所は出先機関にすぎず、行政区の区長は市の職員である。2016年には、議会の同意を得て選任される総合区長に区の事務の一部を委ねる総合区の制度も加わった(地方自治法第252条の20の2)。住所表記の上ではどれも「○○区」と見えるため、選挙・課税・条例の適用範囲を考える場面で取り違えると誤りが大きい。大都市地域における特別区の設置に関する法律により指定都市の区域へ特別区を設置する道も開かれており、大阪市で2度の住民投票が行われたのはこの仕組みである。
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