翌年度繰越しとは、地方自治法第213条(繰越明許費)または第220条第3項(事故繰越)に基づき、当該年度内に完了しなかった事業の経費を翌年度に繰り越して執行することを認める制度で、翌年度5月31日の出納閉鎖までの支出を条件とする。
公共工事の設計変更・用地交渉の長期化・国の補助金交付決定の遅延などにより年度内完了が困難になった事業を、年度またぎで継続執行するための制度。繰越明許費と事故繰越の2種類があり、手続の要件と認められる事由が異なる点が実務上の重要な区別になる。
繰越明許費:議決を経る計画的繰越し
繰越明許費(地方自治法第213条)は、翌年度に繰り越して使用できる経費として議会の議決を得て設定するもの。補助事業の交付決定が年度後半にずれ込む場合や、大規模工事の繰り越しが見込まれる場合に活用される。12月補正または3月補正で繰越明許費の計上(追加)を議決するのが標準的な手順。 補助事業の多くは国・都道府県の交付決定が11月〜翌年2月にずれ込むため、12月補正か3月補正で繰越明許費を計上するのが実務の定石だ。地方自治法第213条は「明許」の要件として「年度内の支出が困難な相当の理由」を求め、単なる予算余剰を繰り越す目的での活用は認められない。
事故繰越:特別の事情による非計画的繰越し
事故繰越(同法第220条第3項)は、支出負担行為(契約締結等)を済ませた後、避けがたい事故(天災・受注者の倒産・埋蔵文化財発見等)により年度内支出が不能になった場合に限られる。繰越明許費の議決なしに首長の判断で繰り越せる反面、「避けがたい事故」の要件が厳格で、単純な発注遅延は認められない。 事故繰越の報告様式(繰越計算書)は地方自治法施行規則第16条の2に定め、翌年度の出納閉鎖前(5月31日まで)に支出しなければならない。「避けがたい事故」の典型例は、用地取得の難航・埋蔵文化財発掘調査の長期化・受注者の倒産等で、発注遅延や工事期間の見誤りは認められない。地方財政状況調査(決算統計)の繰越種別データで全国平均と比較することで、各自治体の繰越管理水準を把握できる。
繰越額の管理と出納閉鎖
繰越した経費は翌年度当初予算とは別に繰越予算として管理し、出納閉鎖(5月31日)までに支出しなければならない。間に合わない場合は不用として処理される。工事・補助担当者は年度末から翌年度5月末までの工程を前倒しで組み立てることが繰越管理の鍵になる。 繰越予算は一般会計の款項目ごとに「繰越明許費繰越」または「事故繰越」と区分して翌年度に引き継がれ、翌年度歳出予算とは別に管理する(地方自治法施行令第145条)。翌年度5月31日を過ぎた未执行額は不用として確定するため、繰越対象工事・委託の工程管理が担当者の最優先課題となる。決算書の「繰越明許費繰越計算書」「事故繰越繰越計算書」は監査委員が重点確認する書類の一つだ。
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