形式収支とは、決算において歳入決算額から歳出決算額を差し引いた算術的な差額であり、翌年度繰越財源を含む最も基礎的な収支指標で、実質収支・単年度収支の算定の起点となるものである。
形式収支は「歳入決算額 − 歳出決算額」によって計算される地方公共団体の決算における最も基礎的な収支概念である。この差額がプラスであれば形式的な黒字、マイナスであれば形式的な赤字となる。ただし形式収支の余剰には、繰越明許費・事故繰越し等によって翌年度に繰り越して使用することが予定されている財源(翌年度繰越財源)が含まれているため、形式収支が黒字であっても当年度の行政サービスに使い切れた余剰とは異なる場合がある。形式収支はそのままでは財政の実態を把握する指標として不十分なため、翌年度繰越財源を除いた実質収支が財政分析の主指標として使われる。
形式収支は名称が示すとおり「形式上の差額」に過ぎず、実質的な財政状況を示す実質収支の計算における第一ステップとして位置付けられる。地方財政状況調査では形式収支から始まり実質収支・単年度収支・実質単年度収支という四段階の収支指標が系統的に整理されており、それぞれの収支指標が異なる視点から財政状況を示す。この指標体系を理解することが地方財政の決算分析の基礎となる。
翌年度繰越財源との関係
翌年度繰越財源は、繰越明許費・事故繰越し等として翌年度の歳入に計上される財源であり、当年度の形式収支の黒字の中に含まれている。形式収支からこの翌年度繰越財源を差し引くことで実質収支が算定される。工事の繰越が多い年度は翌年度繰越財源が大きくなるため、形式収支と実質収支の乖離が大きくなる場合がある。
実務上の意義
地方公共団体の会計では形式収支の余剰分のうち翌年度繰越財源を除いた実質収支が翌年度の「繰越金」として歳入に計上される。この繰越金が財政調整基金の積み増し・地方債の繰上償還・補正予算の財源として活用されるため、形式収支の正確な算定は翌年度の財政運営計画の出発点となる。決算認定の議会審議においても形式収支は最初に確認される収支数値として重要性を持つ。
形式収支の確定値は、決算書に記載される歳入決算額と歳出決算額から直接算出できるため、決算整理が完了した段階で最も早く確定する収支数値でもある。年度末の出納整理期間(5月末)を経た後、6月頃に決算額が確定し形式収支が明らかになる。この形式収支が翌年度予算の補正財源の計算起点となるため、決算整理作業の精度が翌年度財政運営の出発点の精度を左右する。財政担当者は出納整理期間中の最終確認作業を正確に行い、決算数値を確定させることが翌年度の財政計画立案の実務的な前提となる。
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