繰越明許費とは、年度内の完了が見込めない工事等の経費について、翌年度に繰り越して使用できるよう議会が議決した予算で、地方自治法第213条が根拠規定を置く。
繰越明許費とは、歳出予算のうち、その性質上または予算成立後の事情の変更により年度内に支出が終わらないと見込まれる経費を、翌年度に繰り越して使用できる予算制度である。単年度予算主義の例外として地方自治法が認める。
根拠と設定要件
地方自治法第213条第1項は、歳出予算のうち翌年度にわたって支出すること(繰越明許費)を定める場合、議会の議決を経なければならないと規定する。繰越明許費の対象となる事業は当初予算または補正予算に明許費として計上され、年度末に翌年度繰越額が確定して翌年度予算に組み込まれる。事業の性質(大規模工事・補助事業等で年度内完了が困難なもの)または予算成立後の事情変化(設計変更・用地交渉の長期化・天候不順等)が繰り越しの理由となる。
繰越の手続き
繰越明許費の処理は①繰越理由書・繰越計算書の作成→②主務大臣・都道府県知事等への報告(補助事業の場合)→③議会への報告→④翌年度の繰越予算としての管理という手順を踏む。繰越しは歳出予算全額でなく、翌年度に支出が見込まれる額(繰越必要額)を計算して決定する。繰越額は翌年度予算上の区分(繰越明許費繰越分)として別管理され、当初予算と混同しないよう管理する。繰越理由書の記載は「事業の遅延理由」「翌年度完了の見通し」「繰越額の根拠」を明確に示す必要があり、監査委員・議会からの質問に答えられる記録を整備しておくことが担当者の義務となる。
連続繰越の制限と実務
繰越明許費は原則として翌年度までの1年間の繰越が認められる。同一事業を2年連続して繰り越す場合(繰越2か年度)は特に理由が必要であり、3年以上の繰越は認められないため、継続的な事業には継続費または債務負担行為を設定する必要がある。繰越が多い自治体は議会・監査委員から事業進捗管理の問題点を指摘されることがあり、発注時期の前倒しや実施計画の精緻化による繰越削減が財政規律の面から必要とされる。繰越の削減は年度内支出の完遂を意味し、早期発注・早期検収の推進が具体的な対策となる。 繰越明許費の承認を受けた案件については、翌年度の当初予算との整合性を確認し、繰越分の財源が適切に確保されているかを財政担当部署と連携して管理することが担当者の実務となる。繰越案件の進捗を四半期ごとに確認し、当初の繰越理由が解消されたにもかかわらず執行が進まない場合は改善指示を行うことが財政規律の維持につながる。
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