自治事務とは、地方自治法第2条第8項に規定する地方公共団体が処理する事務のうち法定受託事務以外のものの総称で、自治体が自主的に判断して政策・執行の両面で裁量を持つ事務の区分である。
2000年4月施行の地方分権一括法(平成11年法律第87号)により機関委任事務制度が廃止され、自治体の事務は自治事務と法定受託事務の2区分に整理された。自治事務には①国が法令で義務付けた事務(住民基本台帳への登録・国民健康保険の保険者事務等)と②自治体が条例等で独自に行う固有の事務(上乗せ・横出し条例による独自施策等)が含まれる点が混同されやすい。国が自治事務に関与できる手段は技術的助言・勧告・資料提出要求(地方自治法第245条の4)および是正の要求(同第245条の5)に限定されており、機関委任事務時代に認められていた指揮監督・職務執行命令(旧第151条の2)は廃止された。
自治事務と法定受託事務の境界
2000年改正時点で廃止された機関委任事務のうち国の利害に深く関わるものが法定受託事務へ、それ以外が自治事務へ振り分けられた。廃棄物の処理・保育所の設置・都市計画の決定等は自治事務の代表例であり、自治体はこれらについて条例で国の基準を上回る規制(上乗せ条例)や法律に定めがない事項(横出し条例)を定めることができる。ただし条例の内容が法令の趣旨に反するかどうかは個別に判断され、形式上自治事務であっても実質的な自治裁量の幅は事務の種類によって大きく異なる。
是正要求と自治紛争処理制度
国または都道府県が自治事務の処理が法令違反または著しく適正を欠くと認める場合は、文書による是正の要求を行う(第245条の5)。自治体はこれを不服とする場合、国地方係争処理委員会への申出(第250条の13)または高等裁判所への訴訟提起(第251条の5)で争うことができる。機関委任事務時代は職務執行命令訴訟で国が一方的に勝訴するしかなかったのに対し、現行制度は対等な争訟手段を自治体に与えている。
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