ダンピングとは、入札において受注コストを大幅に下回るような不当に低い価格を提示して受注を獲得する行為であり、受注後の工事・業務の品質低下、下請業者への不当なしわ寄せ、技術者の処遇悪化、業界の健全な競争秩序の破壊につながるとして問題視されるものである。
公共調達における競争原理は価格の適正な引下げを促すことを目的とするが、受注コストを著しく下回る入札価格(ダンピング)は品質確保の面で深刻な問題をはらむ。特に建設工事では労務費・資材費の圧縮が工事品質の低下につながるほか、下請業者・二次下請業者への不当なしわ寄せにより建設業の重層下請構造における労働条件の悪化を招く。ダンピング受注が常態化すると適正な積算に基づく入札が困難となり、まじめに積算を行う業者が入札で不利となる「逆淘汰」が生じる懸念もある。発注機関にとっても、ダンピング業者による施工不良・工期遅延・倒産等は工事の完了に支障をきたし、補修費用や再発注コストとして最終的に発注者側の負担増をもたらす。地域の建設業者が受注可能な価格水準を維持できる調達環境を整えることは、災害時の緊急対応や社会インフラの日常維持管理を支える担い手確保の問題でもある。品確法(公共工事品質確保促進法)が担い手不足問題の解消を政策目標に掲げている背景にも、ダンピングによる業界疲弊が深く関係している。
防止制度:最低制限価格と低入札価格調査
国・地方公共団体はダンピング防止のために主に二つの制度を活用する。一つ目は最低制限価格制度で、予定価格の一定割合(通常70〜90%程度)を下回る入札を無効とするものである。もう一つは低入札価格調査制度で、調査基準価格を下回った入札者に対してヒアリング・書面調査を行い、適正な施工・履行が可能かを確認したうえで落札者を決定するものである。最低制限価格制度は建設工事・製造請負に多く用いられ、低入札価格調査制度は複雑な業務委託等で活用されることが多い。いずれの制度においても、調査基準価格・最低制限価格の算定方式を入札前に公表するか否か、また事後公表とするかは発注機関により異なる。
公共工事品質確保法との関係
公共工事品質確保促進法(品確法)はダンピング受注の防止を明示的な目的の一つとして掲げており、発注機関に対してダンピング対策の実施を求めている。予定価格の設定では適正な積算による算定と設計変更ルールの整備が品確法の趣旨に沿った取組とされる。また、適正な利潤が確保できる受注環境を整えることが担い手確保・技術継承・地域建設業の維持につながるという考え方から、ダンピング対策は単なる品質管理の問題を超えた産業政策上の課題として捉えられている。発注機関は最低制限価格の水準を定期的に見直し、労務費・資材費の変動に対応した算定基準を維持することが実効あるダンピング防止の基礎となる。
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