実質収支比率とは、実質収支を標準財政規模で除した比率であり、地方公共団体の年度末における実質的な収支の過不足が標準的な財政規模に対して何パーセントに相当するかを示す財政健全性の参考指標である。
実質収支比率は「実質収支 ÷ 標準財政規模 × 100(%)」で計算される。実質収支比率がプラスであれば実質的な黒字であることを示し、マイナスであれば赤字であることを示す。一般的に実質収支比率は3〜5%程度の黒字が財政運営の適正水準とされる考え方があるが、過大な黒字は予算見積もりの精度低下や必要な行政投資の抑制を示す場合もある。実質収支比率がゼロに近い、または僅かにプラスの状態が続く場合は、財政の弾力性が低下している可能性があり、財政調整基金の積み増し等の対策が検討されるべき状況を示す。
実質収支比率が著しく高い場合(黒字が大きい場合)は、予算の見積もりが保守的すぎるか、歳出が予算に比して大幅に不用となっているかの可能性があり、財政運営の状況を詳細に分析する材料となる。財政担当者は実質収支比率が過小にも過大にもならない水準で財政運営を維持することが長期的な財政の健全性確保につながると認識することが実務上の基本姿勢となる。
健全化判断比率との関係
地方公共団体財政健全化法の「実質赤字比率」は実質収支が赤字の場合のみ算定される指標であり、実質収支比率とは異なる概念である。実質収支比率は黒字・赤字のいずれの場合も算定できる分析指標として、財政状況の自己評価に活用される。財政健全化法の基準に基づく管理と、実質収支比率を用いた自律的な財政評価を組み合わせることが財政担当者の実務上の基本となる。実質赤字が発生してから対策を講じるのではなく、実質収支比率の低下傾向を早期に検知して予防的な対策を取ることが財政管理の理想的な姿勢となる。
経年推移の分析
実質収支比率を複数年度にわたって確認することで、財政収支の傾向(改善・悪化)を把握できる。一時的な税収増減や特別な歳出の影響を除いた趨勢的な動きを見るためには、複数年度の推移や移動平均を用いた分析が有効である。特に人口減少が進む団体では、将来の税収見通しを踏まえた長期的な収支分析が実質収支比率の維持に不可欠となる。
実質収支比率が著しく低い(実質収支が赤字またはゼロに近い)状態が続く場合は、財政調整基金からの取崩しを検討するとともに、歳入確保・歳出削減の具体的な対策を講じることが必要となる。財政力が異なる団体間での単純比較は慎重に行う必要があり、財政力が高い団体は一般財源等が豊富なため比率が高水準になりやすい一方、財政力が低い団体は黒字を維持するだけで精一杯の財政状況にある場合もあるため、比率の絶対値だけでなく財政構造の文脈を合わせて評価することが財政分析の実務的な姿勢となる。
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