179条に基づく専決処分とは、地方自治法第179条の規定に基づき、議会を招集する時間的余裕がない緊急の場合または議会が成立しない場合等に、普通地方公共団体の長が議会に代わって行う議決・決定のことである。
地方自治法第179条第1項は、①議会の招集を待つ時間的余裕がない緊急の場合、②議会において議決等を要する事件が議決されないとき、③議会の議員定数の半数以上が欠けて議会が成立しないとき、の3つの要件に該当する場合、長が議会に代わって専決処分することを認める。この専決処分は長の固有の権限行使ではなく、あくまで「議会に代わる」という性格を有するため、事後に議会への報告・承認が必要となる(同条第3項)。 不承認となった場合でも専決処分の法的効力は失われない(同条第3項ただし書き)。ただし、長は必要と認める措置を講じ、その結果を議会に報告しなければならない。
要件の厳格な解釈
「招集する時間的余裕がない緊急の場合」の解釈は厳格に行われる必要がある。単に長が招集を面倒と判断した場合や、政治的多数が得られないと見込まれる場合に専決処分を用いることは違法であり、議会の権能を侵害する。最高裁判例(平成4年判決等)も専決処分の要件を厳格に解し、要件を欠く専決処分は無効と判示している。 実務上は、①緊急を要する予算措置(台風・地震等の災害復旧費の専決補正など)、②会計年度末の当初予算が成立しない場合の暫定予算措置、③選挙管理委員会の権限行使の緊急補助等が適法な専決処分として行われる例が多い。
専決処分後の議会手続
長は専決処分を行った後、最初に招集される議会に報告し、議会の承認を求めなければならない(第179条第3項)。議会は承認または不承認の議決を行う。不承認となっても処分の効力は遡及消滅しないが、不承認は議会による政治的批判・問責の意味を持ち、長に対する不信任決議への布石となることもある。 承認・不承認の議決は、専決の時点での事実関係が要件を満たしていたかどうかを議会が審査するものであって、不承認によって補正予算の効力が消えるわけではない点は実務担当者が理解しておくべき重要事項である。
179条と180条の違い
179条は「緊急専決」(議会の代替)であるのに対し、180条は「委任専決」(議会が定めた事項の長への委任)であり、両者の法的性質は根本的に異なる。179条専決は例外的・緊急的措置であり、要件を欠けば違法・無効となる。180条専決は議会があらかじめ長に委任した行為であるため、緊急性の要件は不要で、随時行使できる点が対照的である。
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