届出とは、私人が行政庁に対して一定の事実・行為の開始等を通知する行為であり、行政庁の応答を要せず届出書が窓口に到達した時点で手続きが完了する。
定義と申請との違い
届出とは、私人が行政庁に対して一定の事項を通知する行為であり、行政手続法第2条第7号は「行政庁に対し一定の事項の通知をする行為(申請に該当するものを除く)であって、法令により直接に当該通知が義務付けられているもの」と定義する。申請と異なり行政庁には諾否の応答義務がなく、届出書が到達した時点で手続き上の義務が履行されたものとみなされる(同法第37条)。届出は許可制に比べて事業者の手続き負担が軽く、迅速な活動開始が可能である。
届出の種類と実例
届出には事業・活動の開始前に行う事前届出と、発生した事実を事後的に通知する事後届出がある。代表的な届出として、飲食店の食品衛生法に基づく営業届出(保健所へ)・建設業法に基づく変更届出・個人情報保護委員会への個人情報取扱事業者の届出等がある。自治体関連では転入・転出・転居の住民異動届(住民基本台帳法)や婚姻・出生・死亡の戸籍届出(戸籍法)が日常的な届出として知られる。届出を受理した側は受付の記録を保存し、必要に応じて届出内容の公示・台帳登録等の後続事務を処理する。
届出と許可制の比較
同一の規制目的に対して届出制と許可制のどちらを採用するかは、規制の強度と事業者の負担のバランスによって立法政策上決定される。リスクが高い活動や公共への影響が大きい活動には許可制、リスクが相対的に低い活動には届出制が適用される傾向がある。規制改革の観点から、かつて許可制であった分野を届出制へ移行した事例も存在する。届出制は規制コストが低く事業開始を迅速化できる一方、許可制に比べて行政による事前審査・質の担保が難しいという欠点も持ち、制度設計では両面の比較衡量が必要となる。
行政実務上の注意点
形式上の要件を満たした届出書が提出されれば手続きが完了するため、行政庁は原則として届出を受理拒否できない。ただし、行政庁が届出の不備を補正させ実質的に許可制と同様に運用することは行政手続法違反となりうる。届出に虚偽の内容が記載されていた場合には罰則が適用されるほか、当該活動の停止命令等の行政措置が講じられる。届出書の保存期間・廃棄基準は各自治体の文書管理規程に従って管理し、後日の調査・確認に備えて記録の整備を怠らないことが担当職員の基本的責務である。
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