措置費とは、措置制度に基づき行政がサービスの利用決定(措置)を行った場合に、当該施設・事業者に支払われる委託費用の総称で、老人福祉法・児童福祉法・障害者総合支援法等の措置規定を根拠とする。
1990年代の社会福祉改革(措置から契約へ)以前は介護・障害・児童サービスの大半が措置制度で運営されていたが、介護保険法(2000年施行)・支援費制度(2003年施行)等の制定により契約制度に移行した。現在も措置が残る主な場面は、①養護老人ホームへの入所(老人福祉法第11条)、②児童養護施設等への入所(児童福祉法第27条)、③行動の著しい障害を持つ者への緊急的な入所支援である。
措置と契約の違い
措置制度では行政が利用者に代わりサービス利用を決定し、施設・事業者との委託契約に基づいて措置費を支払う。利用者は施設を選べない(または選択の余地が限られる)反面、行政が利用者の権利保護に責任を持つ。契約制度では利用者が自らサービスを選択し、費用は保険・公費・利用者負担の組み合わせで賄われる。緊急性・判断能力の問題がある場合に措置が有効な手段として残存している理由がここにある。 措置制度では行政の裁量で利用決定が行われるため、行政不服申立法に基づく不服申立ての対象となる(措置処分の取消し・変更)。契約制度への移行が進んだ現在も、判断能力が著しく低下した高齢者・虐待が疑われるケース等では措置(老人福祉法第11条第1項第2号)が優先される。令和元年の老人福祉法改正で、虐待等の緊急保護における措置の機動性が強化された。
費用徴収と措置費の構造
措置費は施設の運営に必要な費用(人件費・事業費・管理費)を積み上げた「基本額」と加算項目で構成される。被措置者(または扶養義務者)からは費用の一部を徴収することができ(費用徴収)、徴収基準は各法の施行令・施行規則で定められる。養護老人ホームの場合、本人の収入・資産に応じた費用徴収が行われ、残額が公費から措置費として施設に支払われる。 養護老人ホームの措置費は国の定める「老人保護措置費国庫負担金交付要綱」に基づき、施設基準額(地域加算あり)から被措置者・扶養義務者の費用負担額を控除した額が公費(国3/4・市町村1/4)から支払われる。費用徴収が適切に行われないと自治体の持ち出しが増加するため、毎年度の収入申告と徴収基準額の確認が実務上の重要な管理業務となる。
ご意見箱(匿名で投稿できます)