職権取消

読み:しょっけんとりけし

職権取消とは、行政庁が既に行った処分・許可・認可等に違法または不当の瑕疵を事後に発見したとき、相手方の申請によらず行政庁自らの判断で遡及的に取り消す行為である。

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取消しの効果は原則として遡及し、処分当初から効力がなかったものとして扱われる(ex tunc)。相手方の信頼保護との衡量が問題となり、授益的処分(許認可・給付決定等)の取消しでは帰責性・不利益の程度・公益との均衡を慎重に判断する必要がある。

取消しと撤回の区別

職権取消しは「処分当時から存在した瑕疵(違法・不当)」を理由とする。これに対し撤回は、処分後に生じた事情変化(新法制定・受益者の義務違反等)を理由に将来に向かって効力を失わせる行為で、原則として遡及効を持たない。実定法では「取消し」と「撤回」が用語として混用されているため、条文の趣旨を確認する必要がある。 行政法テキストでは「取消し(瑕疵ある処分の遡及的消滅)」と「撤回(事後事情変化による将来的消滅)」を区別するが、実定法条文では両者を「取消し」の語で統一することが多く、条文解釈の際は趣旨確認が必要となる。補助金交付決定の返還命令が両者の区別に応じて起算点・対象期間が異なる実務上の帰結を生む。

信頼保護と取消しの制約

相手方が処分を信頼して行動した利益(設備投資・事業開始等)が生じている場合、遡及的な職権取消しは「信頼利益」の侵害として制限される。判例は授益的処分の取消しでは「相手方の帰責性の有無」「公益上の必要性の程度」「受ける不利益の大小」を総合的に考量する(最高裁平成19年1月17日判決参照)。不利益処分の取消しは信頼保護の問題が生じにくく、行政庁の裁量に属する場合が多い。 最高裁昭和43年11月7日判決(「行政作用の取消制限」判例)は、授益的処分の取消しに際しては「相手方の受ける不利益と取消しを必要とする公益上の必要性の双方を比較衡量すべき」と判示した先例となっている。補助金の不正受給に対する交付決定取消しは相手方の帰責性が高いため、信頼保護の主張が認められにくく、遡及的取消しと返還請求を一体で行うのが標準的な実務対応だ。

自治体実務での発生場面

補助金の不正受給発覚による交付決定の遡及取消し・返還請求、建築確認の違法発見による取消し、資格取得の不正が判明した場合の認定取消しが典型例。取消し前には聴聞または弁明の機会の付与行政手続法第13条)が必要で、手続を経ない取消しは違法として争われうる。 補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(補助金適正化法、昭和30年法律第179号)第17条は、補助事業者が不正手段で交付決定を受けた場合の交付決定取消しを明文化しており、行政庁は取消しと同時に加算金(不正額の10分の2以上)の徴収命令を発することができる(同法第19条)。聴聞手続を経ずに行った取消しは行政手続法違反として取消訴訟の対象となるため、処分前の法的検討が不可欠だ。

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