国直轄事業とは、国土交通省等の国の機関が自ら計画・実施する公共事業(高規格幹線道路・一級河川・港湾・空港等の整備)であり、地方公共団体は事業の計画・実施に直接関与せず、費用の一部を国直轄事業負担金として負担する義務を課される仕組みになっている。
国直轄事業は国が直接施行する大規模・広域的な公共事業であり、高規格幹線道路・一般国道(直轄管理区間)・一級河川・二級河川(直轄管理区間)・砂防・海岸・港湾・空港等が対象となる。国土交通省の各地方整備局・農林水産省の農政局・森林管理局等が直接発注・監督を行い、地方公共団体は事業の計画や実施に介入する立場にない。整備計画・実施時期・優先順位は国の整備計画によって決まるため、地方公共団体が希望するタイミングに合わせた整備が保証されるわけではない。
国直轄事業によって整備されるインフラは地域の広域的な交通網・防災機能の根幹をなすため、地方公共団体は事業の着実な推進を国に対して要望する立場に立つことが多い。国の予算配分・予算成立の状況によって実施スケジュールが変動し、地方の計画への影響が生じる場合もある。
地方負担の仕組みと問題点
国直轄事業の費用は全額国費で賄われるわけではなく、地方公共団体(都道府県・市町村)が費用の一部を国直轄事業負担金として負担する制度がある。事業の種類・根拠法令により負担割合が異なり、都道府県と市町村がそれぞれ定められた割合を負担する。事業の計画・決定を国が行うにもかかわらず地方が費用の一部を義務的に負担する構造は、地方分権の側面で問題が指摘されてきた論点である。
廃止・縮小をめぐる経緯
2009年前後の地方分権改革論議の中で、国直轄事業負担金の廃止を求める地方六団体の要求が大きく議題化した。その後、維持管理費に係る国直轄事業負担金は廃止されたが、建設費に係る地方負担金は存続している。廃止された維持管理負担金の分は国の直轄事業予算に取り込まれる形となった。国と地方の役割分担・受益と負担の対応関係の側面で制度の在り方の議論は続いている。
地方の関与と事業の優先順位
国直轄事業の箇所選定・実施順序は基本的に国の判断で決まるが、地方公共団体は地域の要望を国の各地方整備局等に伝え、事業の優先的実施を働きかける立場にある。知事・市長等の首長が整備局長・本省への要望活動を行い、地方議会も国への意見書提出を行うことで地域の実情を国に伝える。財政担当者は首長の要望活動に必要な事業費・財政への影響等の資料を整備する実務支援を担うことがある。
都道府県の財政担当者は国直轄事業の予算額の動向を確認し、当年度の事業費の規模と地方負担の見通しを把握する。国の補正予算による直轄事業費の増加が生じた場合は年度途中の補正予算で対応することが必要となる実務的な対応となる。
ご意見箱(匿名で投稿できます)