行政代執行とは、行政代執行法(昭和23年法律第43号)に基づき、義務者が行政上の代替的作為義務を履行しない場合に行政機関が義務者に代わって履行し、費用を義務者から強制徴収する執行手段である。
建物除却・工作物撤去・樹木伐採等の代替的作為義務の履行強制に用いられ(行政代執行法第2条)、事前に相当の期限を定めた「戒告」(書面通知)が必須で、緊急時を除き戒告なしの実施は許されない(同法第3条第1項)。費用は国税滞納処分の例により強制徴収でき、不動産差押え・公売による回収も可能だ。
代執行の要件
①法律または条例・裁判所命令に基づく代替的作為義務、②義務者の不履行または期限内不完了見込み、③他の手段による履行確保が困難または著しく公益に反すること(補充性)の3要件を満たした場合に発動できる(第2条)。非代替的作為義務(本人のみが実行できる作為)と不作為義務は代執行の対象外となる。 手続きは戒告→代執行令書通知(執行責任者・見積費用額等を記載)→実施→費用の納付命令・強制徴収の順で進む(第3条)。緊急代執行(同条第3項)は戒告・令書を省略できるが、危険の切迫という客観的要件が必要で、後日紛争を防ぐための記録・写真撮影による状況保全が重要だ。
空き家・廃棄物への適用
空家等対策の推進に関する特別措置法(平成26年)による特定空家の認定・命令制度の整備で、危険空き家への代執行活用が全国的に広まった。廃棄物の不適正処理では廃棄物処理法第19条の8が自治体による代執行の特則を定め、排出事業者への費用請求も可能としている。 所有者不明の空き家や相続放棄された建物では費用回収が事実上困難で、代執行後の費用が不納欠損となる例が問題視されている。略式代執行(空家法第14条第10項)は所有者不明等の場合に令書通知を省略できる仕組みで、国土交通省は令和5年通知でその活用を促している。
代執行前の段階的対応
実務上は行政指導→命令(根拠法令に基づく)→戒告→代執行の段階的フローをとる。各段階での文書記録(通知書写し・写真等)を整備しておくことが後日の争訟対応に直結する。代執行中は第三者の立入り排除権限があるが(第4条)、過剰な実力行使は違法となるため担当者への事前研修が欠かせない。
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