国家賠償法とは、公権力の行使により生じた損害・公の営造物の設置管理の瑕疵による損害について国・公共団体が賠償責任を負う根拠を定める法律である。
制定経緯と構造
国家賠償法(昭和22年法律第125号)は日本国憲法第17条(公務員の不法行為による損害賠償の権利)を受けて制定された。同法は第1条(公権力の行使による損害賠償)と第2条(営造物の設置管理瑕疵による損害賠償)の二本柱で構成されており、それぞれ異なる要件・効果を規定する。自治体の不法行為・施設管理瑕疵による住民への損害賠償はこの法律に基づいて処理され、民法の不法行為規定より特別規定として優先適用される。
第1条責任(公権力の行使)
国家賠償法第1条は、国・公共団体の公権力の行使にあたる公務員が職務を行うにつき故意・過失によって違法に他人に損害を与えた場合に国・公共団体が賠償義務を負うと規定する。要件として①公権力の行使、②職務上の行為、③故意または過失、④違法性、⑤損害の発生、⑥因果関係が必要である。公権力の行使には権력的行政作用(処分等)のみならず、非権力的な行政活動(行政指導・公権力的情報提供等)も含まれると解されている。加害公務員個人への求償が認められるのは故意・重大な過失がある場合に限られる(同条第2項)。
第2条責任(営造物の設置管理瑕疵)
国家賠償法第2条は、公の営造物(道路・河川・公園・学校等)の設置または管理に瑕疵があり損害が生じた場合に国・公共団体が賠償責任を負うと規定する。設置管理の瑕疵とは、営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいい、過失は要件とされない(無過失責任)。道路の穴・橋の崩落・学校プールの事故等が典型的な第2条責任の事例である。瑕疵の有無は営造物の性質・利用状況・事故発生の予測可能性・費用的制約等を総合して判断される。
自治体の賠償実務
自治体は国家賠償請求に備えて法律顧問弁護士との体制整備と賠償金支払いのための予算確保(予備費・損害賠償基金等)を行っている。訴訟外での示談交渉は法務部門・法律顧問が担当し、賠償額の妥当性・過失相殺の有無・求償の可否等を検討する。道路維持管理瑕疵事案では国賠と道路管理者の責任が重複する場合があり(国道・県道・市道の管理責任の区分)、管理者の確認と原因者への求償が実務上の課題となる。賠償事案の発生後は原因分析と再発防止策の策定を組織として行い、施設管理体制・点検・補修の仕組みを見直すことが同種事故の防止と組織的学習につながる。
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