公務員の立候補制限とは、国や地方公共団体の公務員が在職のまま公職選挙の候補者となることを禁じる公職選挙法第89条の規律である。制限を受ける公務員が立候補を届け出たときは、届出の日にその職を辞したものとみなされる(同法第90条)。
市役所の課長が市長選挙に挑むには、いつ職を辞さなければならないのか。公職選挙法第89条は、国や地方公共団体の公務員は在職中、公職の候補者となることができないと定める。行政の中立への信頼を守り、公務員の地位が選挙に流用されることを防ぐための規律である。そして第90条が出口を用意する。制限を受ける公務員が立候補を届け出たときは、届出の日に公務員の職を辞したものとみなされる。退職願の受理を待つ必要はなく、立候補の自由は保障するが、公務員の身分と候補者の地位を兼ねることだけは許さないという割り切りである。
例外は法律が限定的に列挙する。内閣総理大臣や国務大臣、副大臣、大臣政務官のような政治任用職は在職のまま立候補でき、専ら単純な労務に雇用される者や非常勤の消防団員・水防団員も制限を受けない。また、現職の地方議会議員や長が、任期満了による選挙で引き続き同じ職の候補者となる場合は在職のまま立候補できる。現職の市長が職を退かずに再選を目指して選挙を戦えるのは、この例外による。
みなし退職の仕組み——届出の日に職を失う
第90条のみなし退職は、本人の退職願も任命権者の承認も要しない。立候補の届出が受理された日に、法律の効果として公務員の身分が失われる。任命権者が辞職を握りつぶして立候補を妨げることはできず、逆に、選挙に出る職員を辞めさせ忘れるという事態も起こらない。一方で、立候補を表明してから届出までの間は職員の身分が続くため、その間も職務専念義務や地方公務員法第36条の政治的行為の制限に服し、地位を利用した選挙運動類似行為は公職選挙法第136条の2が禁じる。なお、選挙管理委員会の職員、警察官、裁判官などの特定公務員は、立候補の場面以前にそもそも在職中の一切の選挙運動が禁止されており(同法第136条)、選挙事務に携わる職員には一段厳しい規律がかかる。
例外の射程——在職立候補が許される場合と許されない場合
制限の対象は一般職か特別職かを問わず国家公務員と地方公務員のほぼ全体に及び、行政執行法人や特定地方独立行政法人の役職員も含まれる。公立学校の教員や消防吏員も対象で、立候補すれば届出の日に職を失う。例外とされるのは、国務大臣や副大臣などの政治任用職、専ら単純な労務に雇用される者のうち法令で定める者、非常勤の消防団員・水防団員などである。現職の長や議員に認められる在職立候補の例外は、任期満了による選挙で同じ職の候補者となる場合に限られる。したがって、市議会議員が市長選挙に立候補すれば届出の日に議員の職を失い、市長が知事選挙に出る場合も同様に市長の職を失う。自分の職の任期満了選挙だけが特別扱いされるという線引きを誤ると、思わぬ失職につながるため、選管の立候補予定者説明会でも必ず確認される事項である。
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