議員の兼職禁止とは、地方議会の議員が一定の公職や地位を同時に兼ねることを地方自治法その他の法律で禁じる定めをいう。
地方議会の議員に当選した者が、別の公職や地位にあるとき、その身分をどう整理するかという問いに答えるのが兼職禁止の規定である。地方自治法92条は、議員が衆議院議員・参議院議員、他の地方公共団体の議会の議員、地方公共団体の常勤の職員などを兼ねることを禁じる。これは権力分立や職務の専念を確保し、地位の利益相反を防ぐ趣旨による。兼職禁止に該当する地位に就いた場合、議員はその職を失う(議員失職)。兼職禁止は、議員が一定の請負関係に立つことを禁じる兼業禁止(地方自治法92条の2)とは別の規律であり、両者はしばしば混同されるが、前者は「他の地位を兼ねること」、後者は「自治体との営利取引に関与すること」を対象とする点で区別される。
地方自治法92条が禁じる兼職の範囲
地方自治法92条1項は、議会の議員が衆議院議員・参議院議員を兼ねることができないと定め、同条2項は、他の地方公共団体の議会の議員および常勤の職員・短時間勤務職員を兼ねることができないと定める。国会議員との兼職禁止は、国政と地方政治の双方に同時に責任を負わせない趣旨であり、当選すれば旧来の地位を失う。地方公共団体の常勤職員との兼職禁止は、議事機関の構成員が執行機関の職員を兼ねれば二元代表制の前提である議事機関と執行機関の分離が崩れるためである。これらに該当する地位に就いたときは、議員の職を辞したものとみなされ、あるいは新たな地位に就いた時点で議員の身分を失う。
兼業禁止(請負禁止)との区別
兼職禁止としばしば混同されるのが、地方自治法92条の2が定める兼業禁止(請負禁止)である。兼業禁止は、議員が当該地方公共団体に対し請負をする者、またはその請負をする法人の役員等となることを禁じる規律で、自治体との営利取引による利益相反を防ぐ趣旨である。兼職禁止が「他の公職・地位を兼ねること」を対象とするのに対し、兼業禁止は「自治体との経済的な取引関係に立つこと」を対象とする点で性質が異なる。兼業禁止に該当するかどうかは議会が決定し、該当すると決定されれば議員はその職を失う点では兼職禁止と共通する。
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