地下水保全とは、地下水の過剰採取や汚染を防ぎ、水量・水質の持続的な維持を図るための施策の総称であり、工業用水法・水質汚濁防止法等複数の法令が規制の根拠となる。
地下水の保全に関する法令は単一の根拠法に一本化されておらず、水量規制については工業用水法(昭和31年法律第146号)・建築物用地下水の採取の規制に関する法律(ビル用水法、昭和37年法律第100号)・地盤沈下防止に関する法律(昭和44年法律第88号)が地域指定制度を定め、水質規制については水質汚濁防止法(昭和45年法律第138号)が地下水の水質基準(環境基準)と事業者の浄化責任を規定する。工業用水法・ビル用水法の指定地域では都道府県知事への届出または許可を要し、揚水量・揚水設備の規模が制限される。一方、法律の指定地域外であっても地盤沈下・塩水化・枯渇等の問題が生じている場合、自治体独自の地下水保全条例(地下水採取規制条例)を制定して届出・規制を上乗せしている例がある。水質汚濁防止法第9条の2は地下水の水質保全のための調査義務を事業者に課しており、汚染が確認された場合の浄化措置計画の作成・実施が求められる。
地下水観測網の整備と水収支管理
自治体が地下水を管理するための基礎インフラが観測井戸ネットワークである。都道府県・市区町村は観測井戸を設置し、地下水位・水温・水質を定期的に測定・記録する。観測データは地盤沈下の早期把握に利用されるほか、地下水揚水量と降水量・蒸発散量・河川流量との水収支分析に用いられる。帯水層の状況を把握するため、地質柱状図・電気探査・揚水試験等の地下水調査を実施し、地下水賦存量の推計を更新する。観測データのオープンデータ化を進める自治体もあり、農業・消防・建設等の分野での二次利用が期待されている。
農業用地下水の保全と利用の両立
農業が盛んな地域では灌漑用の地下水需要が高く、水稲の田植え期・夏季乾燥期に揚水量が集中する。過剰揚水による地下水位低下は農業者間の利用競合をもたらすほか、地盤沈下・塩水浸入(沿岸部)の原因ともなる。地下水の利用と保全を両立するため、自治体・農業者・企業が参画する地下水マネジメント協議会を設置し、揚水量の自主規制・涵養事業(水田への冬期湛水等)を組み合わせる取り組みが全国で展開されている。
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