民事訴訟法とは、私人間の財産上・身分上の紛争を裁判所が判決によって解決するための手続を定めた法律である(平成8年法律第109号)。自治体も貸付金の回収や契約をめぐる紛争など財産上の争いでは、一方の当事者としてこの手続に服する。
「行政が当事者なら行政事件訴訟」とは限らない——自治体が法廷に立つ事件のかなりの部分は、ただの民事事件である。公営住宅の家賃滞納と明渡し、給食費や貸付金の回収、工事請負契約をめぐる紛争、公用車の交通事故の損害賠償などは、相手が住民や事業者でも民事訴訟法の手続で争われる。自治体側に特有のルールはむしろ地方自治法の側にあり、訴えの提起・和解・調停などには議会の議決を要し(第96条第1項第12号)、一定額以下の和解や訴えの提起をあらかじめ長の専決処分事項に指定して(第180条)機動性を確保する団体が多数派である。訴訟の追行は弁護士に委任するほか、職員を指定代理人として法廷に立たせる運用が定着している。行政事件訴訟法第7条は「この法律に定めがない事項については、民事訴訟の例による」と定めており、行政訴訟の手続もこの法律を土台に動く。
滞納処分できない債権の回収路——支払督促という主戦場
地方税のように自力執行(滞納処分)できる債権と違い、公営住宅の家賃、水道料金、奨学金や福祉資金の貸付金といった私債権は、裁判所の手続で債務名義を取らなければ強制執行できない。実務で常用されるのが民事訴訟法第7編の支払督促で、簡易裁判所の書類審査だけで発付され、相手方が2週間以内に異議を述べなければ仮執行宣言を経て強制執行に進める。異議が出れば通常訴訟へ移行する。60万円以下の金銭請求なら、原則1回の期日で判決まで至る少額訴訟も選べる。債権管理条例を定めて徴収手続や債権放棄の基準を整える団体が増えており、どの手続をどの債権に使うかの選択が、そのまま回収率と事務量を左右する。
議決という関門——応訴・上訴・和解で扱いが違う
地方自治法第96条第1項第12号が議決事項とするのは訴えの提起、和解、あつせん、調停、仲裁である。住民や事業者から訴えられて被告として応訴する場合は「訴えの提起」に当たらず議決不要だが、第一審で敗訴した自治体が控訴・上告する場合は新たな訴えの提起に準じて議決を要すると行政実例で整理されてきた。議会の会期と裁判所の期日は噛み合わないことが多く、控訴期限(判決送達から2週間)に間に合わせる手段として長の専決処分(第179条)が使われ、軽微な和解は第180条の指定による専決処分で処理するのが通例である。議決を欠いた訴えの提起や和解は効力を争われる火種になるため、訴訟方針の決定は法務担当と議会事務局の日程調整から始まる。
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