私債権とは、地方公共団体が有する金銭債権のうち、契約その他の私法上の原因に基づいて発生する債権をいう。
自治体の債権でも、貸付金や損害賠償金のように民間どうしの取引と同じ性質を持つものは、税のように行政が自力で取り立てることができない。私債権は、貸付金・公営住宅の家賃・物品売払代金・損害賠償金・水道料金など、契約や不法行為といった私法上の原因に基づき発生する金銭債権であり、公法上の原因による公債権と区別される。私債権の回収には、地方税のような自力執行(滞納処分)が認められず、支払督促・少額訴訟・通常訴訟といった裁判所を通じた司法手続を要する。消滅時効も公債権と異なり、債務者が時効を援用して初めて消滅し、自治体が時効完成後に債権を放棄するには議会の議決等を要する場合がある。私債権を公債権と取り違えて差押えに進めば違法となるため、債権の発生原因を確かめ、回収方針を司法手続の費用対効果も踏まえて立てることが債権管理の実務となる。
自力執行できない回収手続
私債権の最大の特徴は、地方税のような自力執行ができない点にある。公債権のうち強制徴収公債権は裁判所の判決を経ずに督促・差押えへ進めるのに対し、私債権は督促を行っても直ちに差押えはできず、回収には支払督促・少額訴訟・通常訴訟等の司法手続を経て債務名義を取得し、強制執行の申立てを要する。少額・多数にのぼる私債権では、訴訟費用や弁護士・司法書士への委託費用と回収見込額を比較し、回収方針を立てる必要がある。簡易裁判所への支払督促は訴訟より簡易で低コストなため、私債権回収で活用される。回収可能性が乏しい債権について漫然と督促を続けても費用がかさむだけになるため、回収・放棄・徴収停止の区分けを債権管理条例等の基準に沿って判断する運用が広がっている。
時効の援用と債権放棄
私債権の消滅時効は、援用がなければ消滅しない。これは、時効の完成により当然に消滅する公債権との決定的な違いである。私債権では、時効期間が経過しても債務者が時効を援用しない限り債権は法律上存続し、自治体は債務者が援用しない債権を回収不能として整理するために、議会の議決による債権放棄や、債権管理条例に基づく長の権限による放棄の手続を要することがある。放棄をしないまま時効完成後の債権を帳簿に残し続けると、回収見込みのない債権が滞留し決算上の問題となる。実務では、時効期間(民法改正後は原則5年または10年など債権の種類により異なる)を債権ごとに管理し、債務の承認や裁判上の請求による時効の更新と、回収不能債権の計画的な放棄とを区別して処理する。
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