債権放棄とは、自治体が有する金銭債権について、その全部または一部の行使をやめて消滅させる行為である。
回収の見込みが立たない債権をいつまでも帳簿に残しておくと、督促などの徴収事務だけがかさみ、決算上も実態と合わなくなる。債権放棄は、自治体が持つ債権を消滅させて整理する行為だが、相手に利益を与え財産を手放すことになるため、勝手には行えない。
地方自治法は権利の放棄を議会の議決事項と定めており(第96条第1項第10号)、原則として個々の放棄に議決が要る。一方で、少額の債権まで一件ずつ議決にかけるのは現実的でないため、債権管理条例に放棄の要件を定め、長の専決で放棄できるようにする団体が増えている。
原則は議会の議決事項、条例で長の専決に
債権放棄は、自治体が財産である債権を手放す行為であるため、地方自治法は権利の放棄を議会の議決事項と定めている(第96条第1項第10号)。本来は、債権を放棄するたびに議会の議決を得なければならない。しかし、回収不能の少額債権が数多くたまる実務では、一件ずつ議決にかけるのは現実的でない。そこで実務では、債権管理条例を設け、「債務者が無資力で資力回復の見込みがない」「所在が不明」といった放棄の要件をあらかじめ定め、その要件に当たる債権は長の専決処分で放棄できるようにしている。これは同条の「特別の定め」を条例で置くことで議決を不要にする仕組みであり、議会による統制と、膨大な少額債権を捌く事務の効率との折り合いをつけるものである。
私債権を消すには放棄が要る——時効・免除との違い
債権放棄が特に問題になるのは私債権である。税のような公債権は、消滅時効が来れば相手の主張を待たずに当然に消滅するが、水道料金や貸付金、奨学金、給食費といった私法上の債権(私債権)は、時効期間が過ぎても債務者が時効を援用しない限り消えない。そのため、回収不能な私債権を整理するには、徴収を見合わせる徴収停止や、履行延期の特約を結んだうえで一定期間後に行う免除(地方自治法施行令第171条の7)、あるいは債権放棄といった、債権そのものを消す手続が必要になる。回収できない債権を会計上落とす不納欠損も、その前提として債権が法的に消滅していることを要する場面があり、放棄や免除はそのための入口になる。
つながりのある用語
対比
ご意見箱(匿名でひとことから投稿できます)