一般市とは、市のうち指定都市・中核市・施行時特例市のいずれにも該当しない市を指す呼称である。地方自治法に定義のある正式な区分ではなく、大都市特例との対比で実務資料や統計に用いられる相対的な分類である。
同じ「市」を名乗っていても、保健所を自前で運営する市と、県の保健所に頼る市とでは、担っている事務の幅がまるで違う。地方自治法は指定都市(第252条の19)と中核市(第252条の22)に都道府県の事務の一部を移す特例を設けており、こうした指定を受けていない標準形の市を指す言葉として一般市が定着した。全国792市のうち、20の指定都市と60余りの中核市、そして2015年の特例市制度廃止に伴う経過措置で旧権限を保つ施行時特例市を除いた残りが一般市であり、数の上では市の多数派を占める。一般市であっても福祉事務所は必置で生活保護の実施主体となり、国民健康保険や介護保険の保険者も務めるから、町村より一段厚い事務を持つ。境界が揺れるのは施行時特例市の扱いで、これを一般市に含めて整理する資料と区別する資料が併存するため、統計や比較表を読むときは定義の確認が要る。
一般市の守備範囲——保健所と児童相談所は県頼み
一般市が処理しない代表例が保健所であり、保健所を設置できる市は指定都市・中核市など地域保健法で定める市に限られるため、一般市の区域は都道府県の保健所が所管する。児童相談所も都道府県(および指定都市等)の機関であり、産業廃棄物処理業の許可なども都道府県の権限である。逆に一般市が必ず担うのは、福祉事務所の設置と生活保護の実施(社会福祉法第14条)、国民健康保険・介護保険の保険者、住民基本台帳や戸籍の事務などである。足りない権限は条例による事務処理の特例(地方自治法第252条の17の2)で都道府県から個別に移譲を受けることができ、同じ一般市でも実際の事務の幅は団体ごとに異なっている。
中核市移行の損得勘定——「一般市のまま」も選択である
人口20万以上であれば中核市の指定を申し出ることができるが、移行すれば保健所の設置・運営を中心に保健衛生・環境・福祉などの分野で県の事務がまとまって移り、保健師や獣医師といった専門職の確保と運営費の負担が恒常化する。普通交付税の基準財政需要額には移行分が算入されるものの、満年度ベースで持ち出しが残るかどうかは団体の人口規模や保健所体制の組み方に左右される。新型コロナウイルス対応では、保健所を持つ中核市が独自の判断を下せた一方、一般市は県の保健所体制に依存する構図が表面化した。要件を満たしながら一般市にとどまる市は珍しくなく、移行は義務ではなく経営判断だというのがこの区分の実相である。
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