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ジチテン

読み:

意味

市とは、市町村の一区分であり、人口5万以上であることをはじめとする地方自治法第8条第1項の要件を備えて設置される基礎的な普通地方公共団体である。全国に792市があり、市町村総数1,718の半数近くを占める。

人口377万の横浜市と、3,000人に満たない北海道歌志内市が、法律の上では同じ「市」という区分に立っている。地方自治法第8条第1項が定める市の要件——人口5万以上、中心市街地の戸数が全体の6割以上、商工業など都市的業態の従事者とその世帯員が人口の6割以上、これに加えて都道府県条例の定める都市的要件——は、市と「なる」ときに審査される入口の基準であり、なった後の地位を縛らないからである。市になると、福祉事務所の設置が義務づけられて生活保護の実施主体となるなど、町村より一段厚い事務を担う。その市の内部にも指定都市中核市施行時特例市一般市という権限の階段があり、同じ市でも担う事務の幅は大きく異なる。792という市の数は、2018年10月に福岡県那珂川市が誕生して以降変わっていない。窓口や統計で日常的に使う区分でありながら、その出入りの仕組み——どうすれば市になれるのか、要件を割り込んだ市はどうなるのか——は意外に知られていない。

町や村から市になる道——5万の原則と合併3万の特例

市制施行の手続は、地方自治法第8条第3項により廃置分合の例によるとされ、関係町村の申請に基づき都道府県知事が県議会の議決を経て処分し、知事はあらかじめ総務大臣に協議して同意を得る(第7条第1項・第2項)。要件判定に使う人口は住民基本台帳ではなく、官報公示された国勢調査の結果による法定人口である(第254条)。原則は5万だが、市町村の合併の特例に関する法律第7条は合併に際して人口3万以上で市となれる特例を置いており、平成の大合併で生まれた新市の相当数がこの特例によっている。合併によらない単独市制は近年ではまれで、2014年に岩手県滝沢村が人口約5万5,000を抱えたまま村から一足飛びに滝沢市となった例と、2018年の福岡県那珂川市が知られる程度である。

要件は入口だけ——人口が減っても市は市のまま

第8条第1項の要件は市となる時点で審査されるだけで、その後に人口が5万を割り込んでも市の地位は失われない。炭鉱閉山で人口が3,000人を下回った歌志内市が今も市であり続けるのはこのためで、市を町村に戻す処分は第8条第3項の読み替えで制度上は可能だが、適用された例がない。逆に、要件を満たしても市になる義務はなく、人口5万を超える広島県府中町のように町のままでいる団体もある。結果として、人口2,000人台の市と4万〜5万人台の町が併存する逆転現象が常態化しており、「市か町か」は現在の規模ではなく沿革と選択の産物になっている。交付税算定や統計の区分、住民の体感する都市の格と法律上の区分とがずれていく——市という区分の読み方として、この片方向性を押さえておく必要がある。

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