市町村の合併の特例に関する法律(合併新法)とは、自主的な市町村合併の円滑化と合併市町村の運営の確保を目的とする時限法である(平成16年法律第59号)。失効した旧合併特例法を引き継いで平成17年4月1日に施行され、期限は延長を重ねて令和12年3月31日までとされている。
「市町村の合併の特例に関する法律」という同じ題名の法律が新旧2本あり、引用を誤ればまったく別の法律を指してしまう。現行法は平成16年制定のいわゆる合併新法で、制定時の題名は「市町村の合併の特例等に関する法律」だったが、平成22年改正で「等」が削られ、結果として昭和40年制定の旧法と同名になった。中身は旧法から大きく転換しており、合併特例債のような強力な財政誘導は設けず、合併協議会の設置を求める住民発議・住民投票の仕組みや、議員の在任・定数の特例、合併特例区など、合併の障害を除き合併後の運営を支える環境整備が中心である。平成22年改正では、国の基本指針や都道府県の合併推進構想といった推進の枠組み自体を外し、平成の大合併の終了を受けて「自主的な合併の円滑化」へ役割を絞った。期限は当初の平成22年3月31日から10年延長を2回重ね、令和12年(2030年)3月31日までの時限となっている。
同名の新旧法——特定は法令番号でしか担保できない
旧法は昭和40年法律第6号、現行法は平成16年法律第59号であり、題名だけではどちらを指すか確定できない。e-Gov法令検索に載るのは現行法のみで、失効した旧法の条文は官報や法令全書を遡らなければ確認できない。例規や協定書、合併建設計画の関係文書には旧法を引用したものが残っており、改正や引用整理の際に新法の条文番号と取り違える事故が起こりやすい。法制執務では、同名法令の特定は公布年と法令番号の併記が唯一確実な方法であり、「旧合併特例法」「合併新法」という通称を添える書き方も読み手の誤読を防ぐ実務的な工夫である。
推進から環境整備へ——平成22年改正の転換点
制定当初の新法は、総務大臣の基本指針と都道府県の合併推進構想を軸に、国と都道府県が引き続き合併を後押しする枠組みを持っていた。第29次地方制度調査会が平成21年に「平成11年以来の全国的な合併推進には一区切り」と答申したことを受け、平成22年改正はこの推進規定を削除し、題名から「等」を落として、住民発議・住民投票や障害除去の特例といった自主的な合併を支える中立的な道具立てに改めた。令和2年改正は期限を令和12年3月末まで再延長したが、これは合併の再推進ではなく、人口減少下で合併を選ぶ団体が現れた場合の受け皿を維持する趣旨と説明されている。合併政策の現在地を映す鏡のような法律である。
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