廃置分合とは、地方公共団体の新設または廃止を伴う区域の変更である(地方自治法第6条・第7条)。二つ以上の市町村を一つにする合体、一方を他方に組み入れる編入、一つを二つ以上に分ける分割、区域の一部を割いて新団体を作る分立の四つの型があり、法人格の変動を伴わない境界変更と区別される。
平成の大合併で市町村の数が3,200余りから1,718へ半減したとき、法的に起きていたことはすべてこの廃置分合である。読みは「はいちぶんごう」で、廃止と設置、分割と合体を縮めた法令用語である。市町村合併という日常語が指すのは四つの型のうち合体と編入であり、廃置分合のたびに法人格が生まれ、または消える——旧団体の条例は失効し、財産と債務は協議で引き継がれ、住所も選挙人名簿も切り替わる。手続は申請主義を建前とし、関係市町村の申請に基づいて都道府県知事が県議会の議決を経て定め、総務大臣に届け出る(第7条第1項)。市に係るものは知事があらかじめ総務大臣に協議して同意を得る必要があり(同条第2項)、処分の効力は総務大臣の告示によって生じる。境目を一本動かすだけの境界変更とは手続も効果も別物であり、どちらに当たるかの見極めが合併協議や境界紛争の出発点になる。
四つの型と境界変更との線引き——法人格が動くか
合体(新設合併)は関係市町村がすべて消滅して新団体が生まれ、編入(編入合併)は編入される側だけが消滅する。分割は一つの団体を廃して複数に分け、分立は区域の一部を割いて新団体を置く。実例は合体と編入がほぼすべてを占め、分割・分立は戦後の境界紛争期を除けばまれである。これに対し境界変更は、隣接団体の間で区域線を動かすだけで法人格の発生も消滅もなく、廃置分合とは条文上も別の処分として扱われる。さらに紛らわしいのが市町村の区域内の町・字の区域変更(第260条)で、住民の住所表記は変わるものの市町村そのものは何も変わらず、市町村限りの手続で完結する。「住所が変わる」という現象は同じでも、法人格・条例・財産・議員の身分まで動くのは廃置分合だけであり、窓口や例規の実務ではこの三層を混同しないことが起点になる。
誰が決めるか——申請主義の建前と知事・総務大臣・国会
市町村の廃置分合は関係市町村の申請に基づき都道府県知事が県議会の議決を経て定める(第7条第1項)。市の設置や廃止に係るものは総務大臣への事前協議と同意を要し(同条第2項)、財産処分が必要な場合は関係市町村の議会の議決を経た協議で定める(同条)。効力発生は総務大臣の告示によるため、合併期日は告示を見据えて逆算される。一方、都道府県の廃置分合は法律で定めるのが原則だが(第6条第1項)、2004年の改正で加わった第6条の2は、関係都道府県の申請に基づき内閣が国会の承認を経て定める合併の道を開いた——道州制論議を見据えた規定で、適用例はまだない。住民の側からは、有権者の50分の1以上の署名で合併協議会の設置を請求する住民発議(市町村の合併の特例に関する法律第4条・第5条)が入口になり、申請主義の建前の内側に住民起点の回路が組み込まれている。
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