条例による事務処理の特例とは、地方自治法第252条の17の2に基づき、都道府県がその権限に属する事務の一部を、都道府県の条例によって市町村が処理することとする制度をいう。市町村の同意なく一方的に移譲できない点に種差がある。
都道府県と市町村のどちらが住民に身近な事務を担うべきかは、地域ごとに事情が異なる。条例による事務処理の特例は、1999年の地方分権一括法で導入され、法令が都道府県の権限と定めた事務を、都道府県が条例を定めることで個別の市町村に処理させる仕組みである。法令そのものを改正せずに、都道府県の判断で事務配分を地域の実情に合わせて組み替えられる柔軟性がある。移譲を受けた市町村は、その事務について都道府県の長と同様の権限を行使する。ただし市町村に負担を押し付けることを防ぐため、都道府県知事は条例の制定改廃にあたり、あらかじめ移譲先の市町村長と協議しなければならず、市町村側からも事務の移譲を要請できる。パスポート発給や農地転用許可などが、この制度で市町村へ移された代表例である。
法令上の権限移譲との違い
都道府県から市町村への事務移譲には、個別の法律が直接市町村に権限を与える場合(中核市・施行時特例市の特例など法律自体による移譲)と、条例による事務処理の特例(第252条の17の2)の2系統がある。後者の特徴は、法令の改正を要さず都道府県の条例だけで移譲が完結する点にある。法令上は都道府県知事の権限のままだが、特例条例で定めた事務については市町村長が処理し、関係法令の都道府県に関する規定が市町村に適用される。移譲できるのは都道府県の自治事務・法定受託事務のうち地方自治法施行令で除外されないものに限られ、国の直接執行事務などは対象にならない。
一方的移譲の歯止めと市町村からの要請
この制度は都道府県が条例で定めるため、形式上は都道府県の意思だけで移譲できるようにも見えるが、市町村への押し付けを防ぐ手続が組み込まれている。都道府県知事は特例条例を制定・改廃しようとするときは、あらかじめ関係市町村の長に協議しなければならない(第252条の17の2第2項)。逆に市町村長は、議会の議決を経て、都道府県知事に対し事務の一部を市町村が処理することとするよう要請でき、要請を受けた知事は速やかに市町村長と協議しなければならない。移譲に伴う経費は、地方交付税の算定や都道府県の交付金で財源措置される。事務と財源を一体で動かす点は権限移譲一般の原則と共通する。
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