専門的知見の活用とは、地方議会が、議案の審査または自治体の事務に関する調査のために必要な専門的事項に係る調査を、学識経験を有する者などの外部の専門家に行わせることができる制度である(地方自治法第100条の2)。
執行部には担当課の職員と審議会の専門家が控えているが、それに向き合う議会が自前で使える専門家はどこにいるのか。専門的知見の活用は、この非対称を埋めるために2006年(平成18年)の地方自治法改正で新設された制度である。大学教授に財政分析を委託する、弁護士に政策条例案の論点整理をさせる、技術士に公共施設の保全計画を検証させるといった使い方が想定され、成果は報告書として議会に納められる。
公聴会や参考人がその場で意見を聴く制度であるのに対し、この制度は議会の外で調査という作業をさせる点に特徴がある。百条調査のような強制力はなく、契約に基づく調査委託として実施され、経費は議会費から支出される。議会基本条例に専門的知見の活用を明記し、政策立案機能の強化策と位置づける議会がある一方、制度を一度も使ったことのない議会も少なくない。何をどの専門家にいくらで頼むかという発注の作法が議会事務局に蓄積されていないことが、活用の壁になっている。
公聴会・参考人との使い分け——聴くのではなく調査をさせる
議会が外部の知見を取り込む手段は三つの系統に分かれる。公聴会は、重要な議案や請願について利害関係者や学識経験者を公述人として招き、会議の場で意見を聴く手続である。参考人は、委員会などが必要と認めた者を招いて意見を聴く、より機動的な仕組みである。これらが会議の場で聴く制度であるのに対し、専門的知見の活用は議会の外で調査をさせて成果物を受け取る制度であり、聴取では得られない数表の分析や条文案の検討のような、まとまった作業量を要する検討に向く。対象は議案の審査または自治体の事務に関する調査のために必要な専門的事項に限られ、実施は議会の権限であるため、本会議の議決を経て行うのが通例である。三つの手段は排他的ではなく、委託調査の報告書を踏まえて参考人質疑を行うような組合せが、審査の厚みを生む。
二元代表制の下での意味——議会側の調査資源
首長は補助機関の職員と附属機関の審議会を使って政策を練り上げてくるのに対し、議会の手元には議会事務局と議会図書室があるだけで、政策の当否を専門的に検証する資源は乏しい。第100条の2が新設されたのは、地方分権の進展で議会の審議能力と政策形成能力の充実が問われたためで、同じ2006年改正では議長への臨時会の招集請求権の付与など、議会側の足腰を強める見直しが並んだ。運用の成否は報告書を受け取った後にかかっており、委員会審査の質疑に反映させ、条例案の修正に結びつけてはじめて費用に見合う。委託先の人選が執行部経由になると検証の独立性が揺らぐため、議会事務局が独自の人脈と契約事務を持てるかどうかが、制度を実質化する分かれ目になる。
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