企業債とは、地方公営企業が水道管路や病院建物の建設改良等に要する資金に充てるために発行する地方債である(地方財政法第5条第1号)。元利償還を税ではなく料金収入等の事業収益で賄う建前である点で、一般会計が発行する地方債と区別される。
水道管の更新や病院の建替えのような巨額の投資を、その年の料金収入だけで賄おうとすれば、料金は跳ね上がり整備は進まない。企業債で資金を調達し、施設を長く使う将来の利用者にも償還という形で負担を分かつことで、世代間の負担の公平と計画的な施設整備を両立させる。償還の財源が税でなく事業収益である点が一般会計の地方債との分水嶺であり、借りた分は減価償却費や支払利息として料金原価に織り込まれ、長期の利用者負担に転化していく。公営企業の予算では資本的収入の柱として計上され、建設改良費の主要財源になる。一方で残高が膨らめば元利償還が料金を圧迫するため、企業債残高対給水収益比率のような経営指標で残高水準を点検しながら発行額を決めるのが経営の基本動作である。
償還財源と一般会計債との違い
地方財政法第5条は地方債を公共施設の建設事業費等に限って認める建設公債の原則を定めており、その第1号が「公営企業に要する経費の財源とする場合」である。一般会計の地方債は元利償還の財源が税や地方交付税であるのに対し、企業債は料金収入をはじめとする事業収益で償還する。発行手続そのものは一般の地方債と同じ協議・届出等の地方債制度の中で行われ、毎年度の地方債計画にも公営企業分の枠が計上される。借入先も財政融資資金等の公的資金から市場資金まで一般会計債と共通であり、違いは「誰が返すか」に集約される。
元利償還の公費負担と経営指標
独立採算が建前とはいえ、下水道の雨水処理や病院の不採算医療のように性質上料金収入で賄えない経費があり、これらに係る企業債の元利償還金の一部は繰出基準により一般会計の負担と整理され、その一部に交付税措置がある。基準を超えて一般会計が償還を肩代わりすれば基準外繰出として経営悪化のシグナルになる。経営状況の点検では、水道の企業債残高対給水収益比率のように事業収益と残高を対比する指標が用いられ、総務省の経営比較分析表で全国・類似団体と比較できる。残高の水準は料金改定の議論と切り離せない。
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