不在者投票指定施設とは、入院・入所中の選挙人が施設内で不在者投票をできる施設として、都道府県の選挙管理委員会が指定した病院、老人ホーム、介護老人保健施設、保護施設などをいう。公職選挙法令上の呼称は指定病院等で、施設の長が不在者投票管理者となる。
入院中の患者や特別養護老人ホームの入所者にとって、投票日に投票所まで出向くことは現実には難しい。不在者投票指定施設は、この人たちが施設にいながら投票できるようにする仕組みで、指定を受けた施設では施設の長が不在者投票管理者となり、選挙のたびに施設内が臨時の投票の場になる。
手続は、施設が入院・入所者の依頼を取りまとめ、それぞれの名簿登録地の市区町村選管に投票用紙と不在者投票証明書を請求するところから始まる。届いた用紙に選挙人が施設内で記載し、施設が名簿登録地の選管へ送致して、投票日の受理・点検を経てはじめて票になる。登録地が複数の市区町村に散らばる入所者を抱える施設では、選挙のたびに何か所もの選管とやり取りする事務が発生し、病院の事務部門や施設の生活相談員が実質的な担い手になる。高齢化で対象者は増え続けており、施設側の事務負担と投票の公正の確保が、この制度の両輪の論点である。
指定の仕組みと施設の長の責任
指定は施設の申請に基づいて都道府県選管が行う。指定を受けると施設の長は不在者投票管理者となり、投票用紙等の請求の取りまとめ、記載場所の確保、投票への立会い、記載済み投票の選管への送致まで、一連の管理に責任を負う。自分で字を書けない選挙人には代理記載の仕組みがあり、施設職員が補助に当たる場面も生じるため、特定の候補者への誘導や働きかけを排する手順の徹底が要になる。都道府県選管は選挙のたびに事務の手引を示し、施設向けの説明会を開くのが通例である。施設にとって不在者投票は数年に一度の行事ではなく、国政選挙と地方選挙が巡ってくるたびに発生する定例事務であり、事務職員の異動で手順が途切れないよう引き継ぐことが指定施設側の責任になる。
外部立会人——2013年改正が求めた公正確保
施設での不在者投票は、外部の目が届きにくいだけに不正の温床になりうる。施設関係者が入所者の投票に介入する事件が相次いだことを受け、2013年(平成25年)の公職選挙法改正で、不在者投票管理者は、市区町村選管が選定した外部の者を投票に立ち会わせることその他の方法により、不在者投票の公正な実施の確保に努めなければならないとされた。外部立会人は施設と利害関係のない第三者の目を入れる仕組みだが、努力義務にとどまるため導入の状況には施設ごとの差があり、立会人のなり手の確保や報酬の手当てが施設と選管双方の実務の悩みになっている。判断能力が低下した入所者の投票意思をどこまで丁寧に確認するかという、規定の外側にある問いも現場には残されている。
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