不落とは、競争入札で開札したものの、すべての入札価格が予定価格の制限の範囲内になく、落札者を決定できないことをいう。応札自体はあった点で、入札者が現れない狭義の入札不調(無応札)と区別される。
開札の場で読み上げた札がどれも予定価格を超えていたとき、その入札はその場で打ち切りになるわけではない。通常はまず間を置かずに再入札を行い、なお予定価格の制限の範囲内の札が出なければ、そこで初めて落札者なし=不落が確定する。確定後の出口は二つあり、最低価格の入札者から順に交渉して予定価格の範囲内で随意契約に持ち込む不落随契か、条件を見直して公告からやり直す再度公告入札かを選ぶ。背景には積算単価と市場実勢の乖離や、工期・施工条件の厳しさで応札者が利益を見込めない事情があり、不落が続く案件は予定価格の組み方そのものの点検材料になる。実務で紛らわしいのは「入札不調」との使い分けで、無応札と価格超過を合わせて広く不調と呼ぶ用法と、無応札だけを不調、価格超過を不落と呼び分ける用法が併存するため、復命や議会説明ではどちらの意味で使っているかを明示したほうが誤解がない。
「不調」との境界——条文は両者を書き分けている
地方自治法にも同法施行令にも「不落」という定義語はなく、発注実務で定着した用語である。ただし地方自治法施行令第167条の2第1項第8号は、随意契約によることができる場合として「競争入札に付し入札者がないとき、又は再度の入札に付し落札者がないとき」と定め、入札者がない場合(無応札)と落札者がない場合(不落)を条文上書き分けている。国土交通省の発注実務でも「不調・不落」と並記して件数を集計する例が定着している。両者は発生原因が異なる——無応札は参加意欲の問題(施工条件・工期・地域の担い手不足)、不落は価格の問題(積算と実勢の乖離)——ため、対策も参加要件の緩和と積算の見直しとで分かれる。集計や復命で両者を混ぜると原因分析が濁る。
不落随契の価格拘束——「随契だから自由」ではない
不落の確定後に最低価格の入札者と随意契約へ移行する場合でも、発注者は最初の入札で定めた条件に縛られ続ける。地方自治法施行令第167条の2第2項は、第8号による随意契約では契約保証金と履行期限を除き「最初競争入札に付するときに定めた予定価格その他の条件を変更することができない」と定めるため、交渉で相手方が予定価格の制限の範囲内まで価格を下げない限り契約はできない。交渉が整わなければ、積算や仕様を見直したうえで再度公告入札へ回るほかなく、年度内完成が必要な工事では工程全体が後ろ倒しになる。再入札の回数や不落随契へ移る手順は財務規則や入札心得で定まっており、開札の現場ではその定めに沿って処理しないと、特定業者への恣意的な誘導を疑われかねない。
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