地域公共交通会議とは、道路運送法の体系に基づき市町村長等が主宰し、乗合旅客運送の態様や運賃・路線、自家用有償旅客運送の必要性を地域の関係者で協議する合議体である。
コミュニティバスを走らせたい、路線バスをデマンド型に切り替えたい——そう考えた市町村が最初に通る関門が地域公共交通会議である。道路運送法は旅客運送の参入や運賃を国の許認可で統制するが、地域の生活交通については、市町村が主宰するこの会議で関係者の協議が調えば、運賃の上限認可が届出で足りるなど手続が大きく緩和される仕組みを設けている。バス・タクシー事業者、住民代表、運輸支局、運転者の組織する団体などが一堂に会し、新しい運行形態が既存事業者の経営とどう折り合うかをこの場で調整する。交通空白地で市町村やNPOが自家用車により行う自家用有償旅客運送も、登録の前提として協議の成立が要件になる。形式上は協議組織にすぎないが、実務ではコミュニティバスやデマンド交通の導入可否を左右する事実上の意思決定の場として機能している。
協議が調うと何が変わるか
地域公共交通会議の協議結果は道路運送法上の手続に直結する。乗合バスの運賃は本来、運輸局の上限認可を要するが、会議で協議が調った運賃は届出で足りる(協議運賃)。市町村がコミュニティバスの路線やデマンド型の区域運行を設定・変更する場合も、協議が調っていれば事業認可の審査が簡素化・迅速化される。自家用有償旅客運送では、バス・タクシー事業者による輸送の提供が困難であることについて地域の関係者の協議が調っていることが登録の要件そのものになっており(道路運送法第79条の4)、会議が「事業者では担えない」と確認することが制度の入口になる。
法定協議会・運営協議会との弁別
名称の似た協議組織が3つあり混同しやすい。地域公共交通会議は道路運送法の体系(国土交通省の告示・通達で運営を規定)に属し、運賃や運行態様の協議を担う。地域公共交通活性化再生法第6条の協議会(法定協議会)は、地域公共交通計画の作成・実施を協議する別の組織である。福祉有償運送の協議は、従来は市町村が設置する運営協議会が担ってきた。実際には構成員が重なるため、規約で地域公共交通会議が法定協議会や運営協議会を兼ねる一体運営が定着しつつあり、附属機関条例への位置付けや委員報酬の整理は市町村ごとの判断に委ねられている。過去の会議資料を読むときは、どの法令系統の会議として開かれたものかを確かめる必要がある。
構成員と運営の実務
主宰者は市町村で、複数市町村による共同設置や都道府県の主宰も認められる。構成員は市町村、地方運輸局(運輸支局)、旅客自動車運送事業者またはその団体、運転者が組織する団体、住民・利用者の代表が基本形となり、必要に応じて道路管理者、警察、学識経験者を加える。設置や運営の細目は国の通達が示す標準に沿って市町村が要綱で定める。実務上の難所は既存のタクシー・バス事業者との合意形成で、デマンド交通の区域や運賃をめぐって協議が長期化する例は珍しくない。協議が調わなければ手続の特例は使えないため、事務局となる交通担当課には、利用見込みのデータ提示や運行委託の条件設計で事業者の懸念に応える調整力が要る。
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