自家用有償旅客運送とは、バス・タクシー事業が成り立たない過疎地等で、市町村やNPO法人等が自家用車を用いて住民や来訪者を有償で運送する制度をいう。
路線バスの撤退や運転手不足で公共交通が空白化した地域で、住民の移動をどう確保するかは中山間地・離島の自治体に共通する難題である。道路運送法は緑ナンバーの事業用車両による旅客運送を原則とするが、その担い手がいない地域では例外として、市町村やNPOが自家用車(白ナンバー)で有償運送することを登録制で認める。これが自家用有償旅客運送であり、市町村運営の交通空白地有償運送と、福祉目的の福祉有償運送に大別される。実施には地域公共交通会議や運営協議会での合意形成が前提となり、運賃やエリアは協議で定める。2020年の法改正で交通空白地有償運送の手続が簡素化され、観光客の輸送も明確に対象に加わった。
二つの類型と担い手
自家用有償旅客運送は対象により二つに分かれる。一つは交通空白地有償運送で、バス・タクシーが確保できない過疎地等の住民や観光客を運ぶ。もう一つは福祉有償運送で、単独で公共交通機関を利用できない高齢者・障害者を対象とする。担い手は市町村のほか、NPO法人、社会福祉法人、医療法人、商工会、観光協会などにわたる。実施には市町村による登録または市町村の協力を得た団体の登録が必要となる。運転者は二種免許がなくても、国土交通大臣が認定する講習を修了すれば従事できる点が、二種免許を要する事業用運送と大きく異なる。
導入手続と合意形成
登録の前提として、地域公共交通会議または運営協議会において、既存のバス・タクシー事業者を含む関係者が「事業者では地域の需要に応えられない」ことに合意する必要がある。この協議で運送の区域、運賃の額、使用車両を定める。運賃は実費の範囲が目安とされ、タクシーのおおむね半額程度が一つの基準となる。事業者との競合を避ける制度設計のため、合意形成が導入の最大の関門となることが多く、協議が調わず導入を断念する例も少なくない。
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