在宅被災者とは、災害で住まいが被害を受けたまま、避難所へ移らず、または移れずに、損傷した自宅で生活を続ける被災者をいう。
避難所の名簿に名前がない人は、支援の名簿からも漏れる——東日本大震災の被災地で長く尾を引いた問題である。物資も情報も巡回支援も避難所を起点に流れる仕組みの中で、壊れた自宅にとどまった世帯には水や食料が届かず、支援制度の案内も来ないまま、応急修理もされない家で年単位の生活を続ける例が石巻市などで多数明らかになった。避難所に行かない理由は、介護や障害、ペット、住み慣れた家への執着、避難所環境への耐え難さなど住む人の数だけあり、「自宅にいられるのだから大丈夫」とは限らない。注意したいのは、感染症対策以降に推奨される在宅避難との違いである。在宅避難は自宅が無事であることを前提にした避難の選択肢だが、在宅被災者は住まいが損傷したまま取り残された状態であり、推奨の対象ではなく把握と支援の対象である。罹災証明の申請や支援制度の利用が本人任せ(申請主義)であるほど孤立は深まるため、被災者台帳と戸別訪問で「来ない人」を探しに行く体制が問われる。
申請主義の死角——なぜ支援から漏れるのか
在宅被災者が制度の死角に落ちる経路は連鎖的である。避難所に入らないため物資・情報の配布網から外れ、罹災証明書の申請や住家の被害認定調査の機会を逃し、応急修理制度や生活再建支援金の存在自体を知らないまま時間が過ぎる。東日本大震災の石巻市では、発災から数年を経ても壊れた家で暮らす世帯の存在がNPOの戸別訪問で掘り起こされ、行政の把握より民間の調査が先行したことが教訓として共有された。この経験は、世帯ごとの被災・支援状況を一元管理する被災者台帳の活用と、保健師や支援員による戸別訪問(アウトリーチ)、そして一人ひとりの事情に応じて支援を組み立てる災害ケースマネジメントの制度化を後押しする原動力になった。避難所の外にいる被災者を「自力で大丈夫な人」と推定しない——支援の初期設計でここを誤ると、復旧期の格差として何年も残る。
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