災害ケースマネジメントとは、被災者一人ひとりの状況を訪問などで個別に把握し、必要な支援を関係機関と連携して継続的に届ける被災者支援の手法である。申請を待って画一的に給付する従来型支援に対し、支援から取り残されがちな被災者を行政側から見つけ出す点に特徴がある。
罹災証明書や各種給付の制度が整っていても、申請できないまま取り残される被災者が必ず生じる。高齢で制度を知らない、心身の不調で手続きに動けない、複合的な困りごとを抱えて窓口をたらい回しにされる、といった人々である。災害ケースマネジメントは、こうした「申請主義の穴」をふさぐために、被災者台帳をもとに支援員が個別訪問し、生活再建の進み具合を一件ずつ確認して伴走する手法として広がった。鳥取県や仙台市の取り組みが先行事例として知られ、令和6年の防災基本計画改定で国も推進姿勢を明確にした。福祉部局・社会福祉協議会・弁護士・NPOなどがケース会議で情報を持ち寄り、住まい・就労・健康・債務といった分野横断の課題を一つの支援計画にまとめる点が、単発の給付や相談窓口との決定的な違いである。
申請主義の穴をどう埋めるか
被災者支援の制度の多くは、被災者自身が申請して初めて支援が動く申請主義を前提とする。だが被災直後の混乱のなかで、高齢者・障害者・外国人・困窮世帯などは制度の存在を知らず、知っていても手続きに踏み出せないことが多い。罹災証明書の取得が遅れれば、それを起点とする被災者生活再建支援金や各種減免もすべて止まる。災害ケースマネジメントは、行政が被災者台帳や避難所名簿から支援が届いていない世帯を能動的に探し、支援員が訪問して困りごとを聞き取る「アウトリーチ(訪問把握)」を起点にすることで、この構造的な取りこぼしを埋める。誰一人取り残さないという理念を、台帳と訪問という具体的な業務に落とし込んだ点に手法としての核心がある。
ケース会議による分野横断の伴走
被災者が抱える困りごとは、住まいの確保・就労・健康・債務・家族関係などが絡み合い、一つの窓口や一つの給付では解決しない。災害ケースマネジメントでは、福祉部局・保健師・社会福祉協議会・弁護士・NPOなどがケース会議に集まり、一人の被災者について情報を共有して役割を分担し、個別の支援計画を作って生活再建まで継続的に伴走する。仙台市は東日本大震災後にプレハブ仮設・みなし仮設の入居者を個別訪問する仕組みを構築し、鳥取県は平成28年中部地震を機に条例で恒久的な制度として位置づけた。これらの先行例を受けて、令和6年改定の防災基本計画は災害ケースマネジメントの推進を国の方針として明記し、平時からの体制づくりが市区町村の課題となっている。
つながりのある用語
ご意見箱(匿名でひとことから投稿できます)