アウトリーチとは、福祉・保健の支援方法の一つで、支援を必要としながら自ら窓口に来ない人に対し、支援者の側から出向いて働きかける手法をいう。
窓口で申請を待つ姿勢だけでは、最も支援を要する人ほど制度の網からこぼれ落ちる。アウトリーチは、ひきこもりや社会的孤立、虐待のリスクを抱える家庭のように、自ら相談に来られない・来ようとしない人に対し、家庭訪問や同行支援によって支援者の側から接点をつくる手法である。母子保健の新生児訪問、ひきこもり地域支援センターの訪問支援、重層的支援体制整備事業のアウトリーチ等を通じた継続的支援事業など、複数の制度に共通の方法論として組み込まれている。申請主義のもとで生じる「支援が届かない層」を埋める発想で、潜在的なニーズを発見し信頼関係を築く入口として位置づけられる。一方で、本人が支援を望まない場合の介入の限度や、訪問を担う人材の確保が、実務上の難しさとして指摘される。
申請主義の隙間を埋める発想
アウトリーチが重視されるのは、日本の社会保障の多くが本人の申請を起点とする申請主義をとるためである。申請主義は本人の意思を尊重する利点を持つ反面、制度を知らない人、申請する気力を失った人、支援を拒む人には給付やサービスが届かない。ひきこもりや社会的孤立、セルフネグレクト、虐待が疑われる家庭などは、まさに自ら窓口に来ない層であり、待ちの姿勢では把握すらできない。アウトリーチは、新生児訪問や乳幼児健診の未受診家庭への訪問、ひきこもり地域支援センターの訪問など、行政・支援機関の側から出向いて接点をつくることで、この隙間を埋める。重層的支援体制整備事業では「アウトリーチ等を通じた継続的支援事業」として、支援につながっていない人を訪問により把握し関係を築く取組みが制度化された。
介入の限度と人材確保という難しさ
アウトリーチには固有の難しさが伴う。第一に、本人が支援を望まない場合の介入の限度である。訪問が本人の意に反する干渉になれば、かえって関係を閉ざし支援から遠ざける恐れがあり、信頼関係を時間をかけて築く姿勢が要る。虐待のように本人の同意なしでも介入が必要な場面と、ひきこもりのように本人の主体性を尊重すべき場面とで、踏み込みの度合いは大きく異なる。第二に、訪問は窓口対応より長い時間と高い専門性を要するため、担い手の確保が課題になる。一人の相談員が訪問に割ける時間は限られ、地域の社会資源や専門職の層の厚さに支援の質が左右される。アウトリーチを掲げるだけでなく、それを支える人員と体制をどう確保するかが、制度を実効あるものにする鍵となる。
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