水位周知河川とは、水防法第13条に基づき、洪水予報を行う河川以外で洪水により重大または相当な損害を生ずるおそれがあるものとして国土交通大臣または都道府県知事が指定する河川であり、氾濫危険水位(洪水特別警戒水位)への到達情報が市町村等へ通知され住民に周知される。
「うちの川には洪水予報が出ない」——では中小河川沿いの住民は、何を引き金に逃げればよいのか。流域面積が大きく水位予測の体制が整う河川は洪水予報河川として数時間先の見通しまで発表されるが、流域が小さく雨から増水までが速い中小河川では、その予測体制を組むこと自体が難しい。水位周知河川はこの穴を埋める制度で、予測の代わりに「氾濫危険水位に到達した」という事実を直ちに市町村長へ通知し、住民に周知する。市町村にとってこの到達情報は避難指示(警戒レベル4)発令の主要な判断材料であり、地域防災計画の発令基準に直結する。ただし到達情報は性質上「すでに危険な水位まで来た」という知らせであり、予報と違って先読みの時間を与えてくれない。雨量の見通しや上流の水位もあわせて早めに動くことが、この制度を使う側の前提になる。
洪水予報河川との違い——「予測」か「到達の事実」か
洪水予報河川では、国土交通省または都道府県が気象庁と共同で、氾濫注意情報から氾濫発生情報までの段階的な洪水予報を発表し、数時間先の水位の見通しを示す。水位周知河川で発表されるのは、あらかじめ定めた氾濫危険水位(水防法上の洪水特別警戒水位)に実際に到達したという情報であり、予測は含まれない。この差はリードタイムの差として市町村の避難情報判断に直接響く。到達情報を待ってから検討を始めると発令が手遅れになりうるため、運用では氾濫危険水位より低い避難判断水位の通過や降雨の見通しを使って先回りする設計が要る。どちらの指定も受けない小河川には水位情報の制度的な発表がなく、水防警報や巡視で補うことになる。
指定が連れてくる宿題——浸水想定区域とハザードマップ
河川が水位周知河川に指定されると、想定最大規模の降雨を前提とした洪水浸水想定区域の指定対象となり、市町村はこれを受けてハザードマップを作成・周知する。浸水想定区域内の要配慮者利用施設には避難確保計画の作成と訓練が義務付けられるため、指定は福祉施設や学校の実務にも波及する。都道府県にとって水位周知河川の指定は、水位計の設置と監視体制の整備、基準水位の設定という継続的な負担を伴う一方、中小河川の防災情報を制度に乗せる入口であり、未指定河川の被害が出るたびに指定拡大が課題として浮上してきた。
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