普通地方公共団体とは、都道府県および市町村の総称であり、組織・権能・存立のあり方が全国に共通で普遍的な地方公共団体の区分である(地方自治法第1条の3第2項)。特別区や一部事務組合などの特別地方公共団体と対をなす。
地方自治法の条文をめくると、主語の大半は「都道府県は」でも「市町村は」でもなく「普通地方公共団体は」である。この総称を押さえていなければ、議会・執行機関・財務といった自治法の中核規定がどの団体に適用されるのかを読み取れない。「普通」の名は格付けではなく、住民・区域・自治権を完備した統治団体の標準形として全国どこにでも存在することを指しており、広域を受け持つ都道府県と、基礎を受け持つ市町村の二層で構成される。憲法第92条以下が保障する地方自治の担い手として正面から想定されているのもこの普通地方公共団体であり、長と議員の直接公選(第93条)や一の地方公共団体のみに適用される特別法の住民投票(第95条)といった憲法上の保障が直接に及ぶ。一方、特別区には地方自治法第283条第1項により市に関する規定が適用されるという読み替えの技術で同等の規律が届く構造になっている。普通か特別かの区分は、憲法の保障の射程、条文の適用関係、課税権の有無といった制度の土台を左右する、地方自治法の最初の分岐点である。
条文の主語を読む——適用と準用が届く範囲
地方自治法は第2編の表題そのものが「普通地方公共団体」であり、議会(第89条以下)、執行機関(第138条の2以下)、財務(第208条以下)といった本体規定はすべて普通地方公共団体を名宛人として書かれている。特別地方公共団体には、この本体規定が読み替えで届く。特別区には第283条第1項が「市に関する規定」を適用し、地方公共団体の組合には第292条が、都道府県の加入するものには都道府県、市の加入するものには市、その他には町村に関する規定をそれぞれ準用する。つまり「普通地方公共団体の議会は」と始まる条文は、適用・準用の連鎖を経て一部事務組合の議会にも及びうる。例規審査や争訟対応で特別地方公共団体が絡むときは、本体規定だけでなく読み替え規定までさかのぼって適用関係を確定するのが定石である。
憲法が守る「地方公共団体」との距離
憲法第93条第2項は地方公共団体の長と議員の直接公選を定めるが、最高裁昭和38年3月27日大法廷判決は、この憲法上の地方公共団体に当たるには法律上の名称だけでなく、事実上住民の共同体意識に支えられた沿革と実体を要するとして、特別区を憲法上の地方公共団体から外した。裏返せば、都道府県と市町村という標準二層の普通地方公共団体こそが憲法の想定する自治の単位である。このため、都道府県を廃止して道州に再編する道州制論議では、法律だけで二層の一方を組み替えてよいのか、憲法上の制度的保障に触れるのかという論点が必ず浮上する。憲法第95条の特別法住民投票が実際に発動された例も、1949年の広島平和記念都市建設法をはじめいずれも普通地方公共団体である市を対象としたものであり、憲法と地方自治法の接点はこの区分の上に組まれている。
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