日本の法律は一貫して「地方公共団体」という語を用いるのに、なぜ「地方政府」という言い方が併存するのか。地方公共団体が法人としての団体性に着目した呼称であるのに対し、地方政府は、その団体が住民を代表し独自に意思決定する統治主体であることを前面に出した呼称である。比較政治学や地方分権の議論では、国を中央政府、都道府県・市町村を地方政府と呼び、両者を対等な政府間関係としてとらえる。二元代表制のもとで首長と地方議会がともに住民から直接選ばれ、条例の制定や予算の編成を自ら行う日本の自治体は、まさに地域の政府として機能している。地方分権改革は、この地方政府の自己決定の幅を広げてきた営みと位置づけられる。
地方公共団体という法律用語との違い
地方政府と地方公共団体は同じ対象を指すが、強調点が異なる。地方自治法をはじめ日本の実定法はすべて「地方公共団体」を用い、これは法人格を持つ団体としての性格に着目した呼称である。これに対し地方政府は、その団体が住民の選挙によって自らの代表機関を持ち、条例という独自の法規範を定め、予算を編成して地域を統治する点を捉えた呼称で、主に政治学や政策論で用いられる。呼び名の違いは、地方公共団体を国の事務を分担する下部組織とみるか、独自の正統性を持つ統治主体とみるかという、地方自治の捉え方の違いを映している。
中央政府との政府間関係
地方政府という捉え方の要点は、国である中央政府との関係を上下ではなく政府間関係として見る視座にある。地方政府は地方税の課税権や条例の制定権を持ち、首長と地方議会がそれぞれ住民から選ばれる二元代表制のもとで自律的に意思決定する。もっとも財源面では地方交付税や国庫支出金により中央政府に依存する部分も大きく、自己決定の幅は国の法令による義務付け・枠付けにも制約される。地方分権改革は、こうした中央政府と地方政府の権限と財源の配分を、地方の自己決定を広げる方向で見直してきた。
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