洋上投票とは、遠洋区域などを航海する指定船舶の船員が、船上からファクシミリ装置を用いて行う不在者投票の特例制度である(公職選挙法第49条第7項)。対象は衆議院議員総選挙、参議院議員通常選挙および最高裁判所裁判官国民審査に限られる。
数か月に及ぶ遠洋航海に出る船員は、期日前投票の期間にも選挙期日にも国内におらず、制度の手当てがなければ投票の機会そのものを失う。洋上投票は1999年(平成11年)の公職選挙法改正で創設された仕組みで、あらかじめ選挙人名簿登録地の市区町村選挙管理委員会から選挙人名簿登録証明書の交付を受けた船員が、航海中の船舶上で投票送信用紙に記載し、ファクシミリで指定の選挙管理委員会へ送信する方法により投票する。
対象となるのは、大中型まき網漁業や外航海運などの指定船舶に乗り組んで日本国外の区域を航海しようとする船員で、利用できる選挙は国政の総選挙・通常選挙と国民審査に限られ、地方選挙や国政の補欠選挙では使えない。漁業や海運の拠点を抱える市区町村の選管にとっては、証明書の交付やファクシミリ投票の受信など、選挙のたびに発生する固有の事務がある制度である。
対象の線引きと拡大の経緯——船員手帳のない実習生まで
洋上投票が使えるのは衆議院議員総選挙、参議院議員通常選挙と、総選挙に併せて行われる最高裁判所裁判官国民審査だけで、統一地方選挙や知事選挙はもとより、国政選挙でも補欠選挙や再選挙は対象にならない。創設時の対象は指定船舶に乗り組む船員手帳を持つ船員だったが、2016年(平成28年)12月の公職選挙法改正(2017年4月施行)で、船員手帳を持たずに航海の実習を行う水産高校や商船系教育機関の学生や生徒らにも広げられた。これとは別に、南極地域観測隊の隊員等についても2006年からファクシミリによる同様の投票が認められている。投票の秘密を電送の仕組みでどう守るかという固有の課題を抱えた制度であり、送信された投票は受信側の選挙管理委員会で封筒に収めて選挙人名簿登録地へ送られる。憲法改正の国民投票には洋上投票の仕組みが置かれておらず、国会でも拡充が論点として取り上げられてきた。
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