生活環境保全条例とは、公害規制法令の対象から漏れる発生源や地域固有の環境問題に対応するため都道府県や市町村が定める総合的な環境規制条例であり、その多くは旧来の公害防止条例を全面改正・改称したものである。
法律の規制対象にならない小さな工場の騒音、野外焼却、深夜営業の音は、何を根拠に指導するのか。大気汚染防止法や騒音規制法は一定規模以上の施設・地域しか対象にしないため、規制の網の外で起きる生活公害の受け皿として、自治体は独自の条例を持ってきた。系譜をたどると、1949年の東京都工場公害防止条例に始まり、1969年の東京都公害防止条例は国の法律より厳しい規制で公害行政を先導した。1970年の公害国会で国の法体系が整うと条例は補完役に回り、2000年前後には、生活騒音、地下水、土砂埋立て、温暖化といった「公害」の枠に収まらない課題を取り込んで、生活環境保全条例へと衣替えする都道府県が相次いだ。東京都が2000年に制定した環境確保条例はその代表例である。法律と条例の二層構造を持つ環境規制の、条例側の本体にあたる存在といえる。
上乗せ・横出しの受け皿
生活環境保全条例の規制手法は、法律より厳しい基準を課す上乗せと、法律が対象としない発生源・行為に規制を広げる横出しに大別される。横出しの典型が、法対象未満の小規模燃焼施設や作業場の届出・基準、野外焼却の制限、地下水採取の許可・届出、土砂等による埋立ての規制、アイドリングストップの義務づけである。光害や空き地の雑草繁茂まで盛り込む例もあり、条例の目次はその地域で何が問題になってきたかの記録でもある。中身は団体ごとに大きく異なるため、複数の自治体で操業する事業者の立地・設備相談では、法令と当該団体の条例の両方を照合しなければ届出漏れが生じる。
条例が国の法律を先導した歴史
1969年の東京都公害防止条例は、工場の設置を認可制とし、国の規制を上回る基準を課して「法律の限界を条例が突破できるか」という論争を呼んだ。翌1970年の公害国会で大気汚染防止法等が強化され、条例による上乗せ基準の設定も法律自身が認めるところとなり、自治体発の規制が国の制度を引き上げるという先例になった。その後の改称・再編は、公害苦情の主役が工場から近隣の生活騒音や飲食店の悪臭に移った変化を映している。罰則や公表、改善勧告といった実効性確保の手段も条例ごとに設計され、地方自治法の委任の範囲で直罰規定を置くものもある。環境法務の足腰を試される分野であり、例規担当と環境部局の協働が欠かせない。
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