捕捉率とは、生活保護の受給要件を満たす状態にある世帯のうち、実際に保護を受給している世帯が占める割合をいう。
生活保護は、必要とする人にどれだけ届いているのか。保護率が「人口のうち何人が保護を受けているか」を示す普及の指標であるのに対し、捕捉率は「本来受けられるはずの人のうち何割が受けているか」という到達度の指標である。日本の捕捉率は研究や推計手法により1割台から3割程度と推計されることが多く、欧州諸国と比べて低い水準にあると指摘されてきた。低い捕捉率は、要件を満たしながら保護に至らない「漏給」が大量に存在することを意味し、申請主義の下での制度周知、窓口運用、スティグマ(恥の意識)の問題と直結する。福祉事務所にとっては、保護率の上昇だけを見て業務量や財政を語ると、潜在的な要保護層の規模を見誤ることになる。生活困窮者自立支援制度や民生委員によるアウトリーチは、この捕捉されない層に手を伸ばす仕組みとして位置づけられる。
推計の方法と限界
捕捉率の分母である「受給要件を満たす世帯」は、どの統計にも直接は現れない。研究者や厚生労働省は、国民生活基礎調査や全国消費実態調査のミクロデータから世帯の所得・資産を推計し、生活保護基準と突き合わせて分母を作る。このため、資産をどこまで考慮するか、稼働能力や扶養の可能性をどう扱うかによって推計値は大きく振れ、所得のみで判定した場合と預貯金等の資産要件まで考慮した場合とでは数倍の開きが生じる。厚生労働省も推計を公表したことがあるが、捕捉率を公式の統計指標として定期的に測定・公表する仕組みは持っておらず、国会答弁でも推計の限界が繰り返し説明されている。数字を引用するときは、どの調査・どの判定条件に基づく値かを必ず確認する必要がある。
漏給と濫給――申請主義の両面
捕捉率の裏側には「漏給」と「濫給」という古典的な対概念がある。漏給は要件を満たす人が保護を受けていない状態、濫給は要件を満たさない人が受給している状態を指し、制度運用はこの両者の最小化を同時に追う。日本では不正受給への社会的関心が高い一方、その金額・件数は保護費全体のごく一部にとどまり、規模としては漏給の方がはるかに大きいというのが研究者の共通理解である。申請保護の原則の下では、制度を知らない、窓口に行けない、扶養照会への抵抗感があるといった理由で申請自体が起きないため、捕捉率の改善には広報や相談支援だけでなく、申請を妨げる窓口運用の点検が効く。
ご意見箱(匿名でひとことから投稿できます)