申請保護の原則とは、生活保護は要保護者・その扶養義務者・同居の親族からの申請に基づいて開始することを建前とする生活保護法第7条の原則をいう。
窓口で「申請書はまだ渡せない」と相談者を帰す運用が違法とされるのはなぜか。生活保護法第7条は、保護を本人らの申請を起点に開始すると定め、行政の側が職権で被保護者を選び出す仕組みを採らない。これは保護を受けることが国民の法的権利(保護請求権)であることの手続的な現れであり、行政が必要と判断した者だけに恩恵的に与える戦前の救護制度との断絶を示す。実務では、申請の意思を示した者に申請書を交付せず相談扱いにとどめる「水際作戦」が、この原則に反する違法な対応として裁判例・通知で繰り返し否定されてきた。一方、保護を要する者が急迫した状況にあって申請を待てない場合には、第7条ただし書きが福祉事務所の職権による保護開始(職権保護)を例外として認める。
申請権者と申請の方式
生活保護法第7条が申請をなしうる者として挙げるのは、要保護者本人・その扶養義務者・要保護者と同居する親族の三者である。第三者や民生委員が代わって申請することは認められず、これらの者が福祉事務所(保護の実施機関)に対して申請の意思を表示することで手続が始まる。申請は書面によることが原則だが、申請書を作成できない特別の事情があるときは口頭による申請も妨げないと解されており、窓口で申請書の交付を拒むことは申請権の侵害となる。申請を受けた実施機関は、資産・収入・扶養・稼働能力など補足性の要件を調査したうえで、原則として申請から14日以内(特別な理由があれば30日以内)に保護の要否と程度を決定し、書面で通知しなければならない(第24条)。
職権保護という例外との関係
申請保護を建前としつつ、第7条ただし書きは「要保護者が急迫した状況にあるときは、保護の申請がなくても、必要な保護を行うことができる」と定め、福祉事務所の職権による保護開始(職権保護)を例外として認める。路上で衰弱して意思表示できない者や、医療を直ちに要する傷病者がこれにあたり、申請を待っていては生命・健康が損なわれる場合に発動される。職権保護はあくまで急迫の例外であり、状況が落ち着けば本人の申請に基づく通常の枠組みへ移行させるのが運用である。申請保護の原則と職権保護は、保護の開始局面における原則と例外の一対をなす。
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