行政行為の瑕疵とは、行政行為がその成立・効力に必要な適法要件を欠いている状態をいう。瑕疵が重大かつ明白なときは行政行為は無効となり、それに至らないときは取り消しうべき行政行為にとどまる。
違法な課税処分や許可取消しがなされたとき、その効力は最初から無いものとして扱えるのか、それとも一度は有効として従わなければならないのか——この分かれ目を決めるのが瑕疵の程度である。行政行為には公定力があり、たとえ違法でも正当な権限を持つ機関が取り消すまでは有効なものとして通用する。そのため瑕疵があるだけでは効力は失われず、瑕疵が重大かつ明白という高いハードルを越えて初めて、はじめから無効と扱われる。これに達しない通常の違法は取り消しうべき行政行為にとどまり、職権取消しや取消訴訟・審査請求によって取り消されるまで効力が残る。実務では、無効を主張すれば出訴期間に縛られないが立証のハードルが高く、取消しを争えば期間制限があるという違いが、救済手段の選択を左右する。
無効と取り消しうべき瑕疵を分ける重大明白説
瑕疵が無効をもたらすか、取り消しうべきにとどまるかは、判例・通説のとる重大明白説によって判断される。瑕疵が法の根幹に関わるほど重大であり、かつ処分の外形から誰の目にも明らかである場合に限り、その行政行為ははじめから効力を持たない無効となる。重大であっても明白とはいえない瑕疵、たとえば内部の事実認定の誤りや軽微な手続違反は、取り消しうべき瑕疵にとどまる。無効と取消しの区別は実益が大きく、無効であれば出訴期間の制限を受けず無効確認訴訟やいつでも無効を前提とした争いができるのに対し、取り消しうべきにとどまれば取消訴訟の出訴期間を過ぎると争えなくなる(不可争力)。
公定力ゆえに瑕疵があっても直ちには効力を失わない
行政行為の瑕疵を理解する前提として、行政行為には公定力という特殊な効力がある。これは、行政行為が違法であっても、無効と評価される場合を除いて、権限ある機関が取り消すまでは有効なものとして通用する力である。したがって瑕疵があること自体は効力の喪失を意味せず、瑕疵のある行政行為の効力をどう失わせるかという次の問題——行政庁自らが消す職権取消しや、相手方が争う取消訴訟——につながる。瑕疵が後から治る瑕疵の治癒、別の根拠で正当化される違法行為の転換などの例外的処理も、この公定力を前提として論じられる。なお公定力はあくまで取消しまで暫定的に通用させる力にすぎず、瑕疵が違法であること自体を正当化するものではない。
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