公定力とは、行政処分に瑕疵があっても、それが重大かつ明白で無効と評価される場合を除き、権限ある機関が取り消すまでは一応有効なものとして通用する効力をいう。
違法だと思う処分を受けた住民が、その処分を無視して従わなければ済むかというと、そうはいかない。課税処分や許可の取消しに不服があっても、自分の判断で「無効だ」と決めて行動すれば、滞納処分や是正命令の対象になりうる。処分の効力をなくすには、審査請求や取消訴訟という正規の手続で取り消してもらう必要がある——この建前を支えるのが公定力である。行政処分が一方的に名あて人の権利義務を動かせるのは、いったん下された処分をめぐって誰もが勝手に有効・無効を主張し合うと法律関係が安定しないからであり、公定力は早期の法的安定を優先する考え方に立つ。ただし瑕疵が重大かつ明白で処分が当初から無効なときは公定力が働かず、取消しを経なくても効力を否定できる。学説上は、公定力を取消訴訟という排他的な取消手続が法定されていることの裏返し(取消訴訟の排他的管轄)として説明する見方が有力である。
取消しまで有効という建前が実務に及ぼす帰結
公定力の実務的な意味は、処分を争う側に「正規の手続を踏む負担」を課す点にある。たとえば違法な課税処分を受けた者が納付を拒んでも、処分が取り消されない限り租税債権は有効に存在し、滞納処分が進む。先に納付したうえで取消訴訟を起こし、勝訴して還付を受けるという順序を強いられる。処分の効力を一時的に止めたい場合は、別途、執行停止の申立てによるしかない(争えば自動的に止まるわけではない)。窓口で「この処分はおかしいから無効だ」という主張に接したとき、無効事由(重大かつ明白な瑕疵)に当たらない限り、職員側は処分を前提に対応してよいことの根拠でもある。
無効との境界——重大明白説
公定力が働くのは「取り消しうべき瑕疵」にとどまる場合であり、瑕疵が重大かつ明白で処分が無効と評価されるときは公定力が及ばない。判例・通説はこの境界を重大明白説で画し、瑕疵が処分の重要な要件にかかわり(重大)、かつ処分の外形上誰の目にも明らかである(明白)ことを要求する。無効な処分は出訴期間の制限を受けず、取消訴訟を経なくても無効確認訴訟や民事・行政の前提問題として効力を否定できる。逆に言えば、軽微な手続違反など重大明白に至らない瑕疵は、出訴期間内に取消訴訟で争わなければ公定力により処分が確定し、後から覆せなくなる。
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