歩切り(ぶぎり)とは、発注者が積算基準に従って算出した設計金額を、正当な理由なく一律に切り下げて予定価格を定める行為をいう。
予定価格を設計金額より低く設定すれば、その分だけ歳出を抑えられるように見える。歩切りは、この発想から設計金額の一定割合を機械的に削って予定価格を決める実務慣行であり、かつて広く行われていた。しかし設計金額は積算基準に基づき適正な工事費を積み上げた額であるから、これを根拠なく切り下げれば、受注者の利潤や現場の労務費が圧迫され、ダンピング受注・下請へのしわ寄せ・施工品質の低下を招く。公共工事の品質確保の促進に関する法律(品確法)の2019年改正は、市場の実態を反映した適正な予定価格の設定を発注者の責務とし、歩切りを明示的に禁止した。担当者にとっては、端数整理や入札不調を避けるための値引きと、禁止される歩切りとの線引きをどこで引くかが要点となる。
禁止される歩切りと適正な端数処理の違い
禁止されるのは、積算した設計金額を正当な理由なく一律・機械的に削る行為である。たとえば「設計金額の95%を予定価格とする」といった割合を慣例的に乗じる運用は、市場の実態と無関係に対価を切り下げるため歩切りに当たる。一方、設計金額の千円未満を切り捨てるといった端数整理や、最新の取引実態を調査したうえで個別の積算項目を見直して額を改める行為は、根拠のある価格設定であって歩切りではない。両者の分かれ目は、積算の根拠に立ち戻った合理的な説明ができるかどうかにある。担当者は、予定価格を設計金額から下げる場合、その理由を積算上の根拠で示せるかを確かめる必要がある。
品確法による禁止と発注者の責務
歩切りが問題視されたのは、低い予定価格が最低制限価格・調査基準価格を連動して押し下げ、適正な利潤を欠いた受注を常態化させ、建設業の担い手不足と品質低下を招いたためである。品確法の2019年改正は、発注者の責務として「適正な利潤を確保できるよう、市場における取引価格等を的確に反映した適正な予定価格の設定」を明文化し、これと表裏の関係で歩切りを禁止した。国は実態調査を行い、歩切りを行っていた団体に是正を求めてきた経緯がある。発注者は、労務単価や資材単価の改定を予定価格に反映し、積算基準どおりに算定した額を尊重することが求められ、歩切りの有無は入札契約の適正化を点検する際の確認事項となる。
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