ゼロ債務負担行為とは、翌年度以降に履行し支出する契約を年度内に締結するため、当該年度の支出予定額をゼロとして予算に定める債務負担行為をいう。
公共工事の現場は4月から6月に閑散とし、年度後半に集中する——単年度主義の予算制度が生む季節偏在である。当初予算の成立後に設計・積算・入札を始めると、契約は早くても夏、着工は秋にずれ込みやすい。ゼロ債務負担行為は、支出を伴わない契約締結の権限だけを先に予算化する工夫で、前年度のうちに入札・契約を済ませ、4月から現場を動かすことを可能にする。支出はゼロでも契約の締結は債務を負担する行為そのものであるため、地方自治法第214条の債務負担行為として事項・期間・限度額の議決を経る必要がある。国土交通省と総務省は施工時期の平準化の主要手法としてゼロ債務の活用を要請しており、平準化率の公表で取組が見える化されたこともあって、12月議会や3月議会で翌年度工事のゼロ債務を設定する運用が広がった。ゼロ市債・ゼロ県債とも呼ばれ、建設業の担い手確保や閑散期の経営安定にも効く発注者側の道具である。
単価契約・委託契約への応用
ゼロ債務は工事に限らない。庁舎の警備・清掃や情報システムの運用のように4月1日から履行を開始する業務委託は、前年度中に契約を済ませなければ年度当初に空白が生じるが、長期継続契約(地方自治法第234条の3)を結べるのは電気・ガス・水道の供給や不動産・物品の賃借など条例で定める類型に限られる。この枠に収まらない契約の年度当初開始を予算面で裏づける手段がゼロ債務負担行為であり、除雪委託のように履行が翌年度冬期に及ぶ単価契約でも使われる。入札手続のみを準備行為として先行させる運用もあるが、落札決定後すみやかに契約まで進めたい案件では債務負担の議決を取っておくのが安全である。
繰越明許費との違い
どちらも「年度をまたぐ」場面で登場するが、性格は逆である。繰越明許費は、当該年度の歳出予算に計上した経費が年度内に支出を終えない見込みになったとき、予算の効力を翌年度へ延ばす事後対応の装置である。これに対しゼロ債務負担行為は、はじめから当該年度は契約のみ・支出は翌年度と設計したうえで契約権限を授権する事前設計の装置で、支出は翌年度の歳出予算に計上して行う。やむを得ない繰越と計画的な平準化は別物であり、安易な繰越が常態化すれば年度区分の規律が緩む。年度またぎを最初から見込める案件は、ゼロ債務で正面から設計するのが筋である。
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