単年度主義とは、予算は会計年度ごとに編成・議決され、その年度内に限り効力を持つとする予算原則である。地方自治法は毎会計年度の予算の調製と年度開始前の議決を定めており(第211条第1項)、年度をまたぐ支出には継続費や債務負担行為のような別の根拠を要する。
「予算は使い切らないと来年減らされる」という年度末の駆け込み執行は、職員のモラルの問題である前に、制度の構造から生まれる現象である。単年度主義は議会による財政統制を毎年度効かせるための原則であり、予算という支出の授権に1年の賞味期限を付けることで、行政が長期の白紙委任を手にすることを防いでいる。よく似た会計年度独立の原則が「ある年度の支出はその年度の収入で賄う」という歳入歳出の帰属の規律であるのに対し、単年度主義は予算の効力と編成周期の規律であり、両者はしばしば一括りに語られるが規律の対象が違う。複数年にわたる工事や契約のために、制度の側も継続費・繰越明許費・債務負担行為・長期継続契約といった緩和装置を用意してきた。国でも複数年度の事業執行や基金の活用をめぐって単年度主義の弊害是正が政策論として繰り返し登場しており、統制の価値と機動性をどう交換するかという古くて新しい論点である。
会計年度独立の原則との関係
両者は重ねて語られるが、規律の対象を分けて理解すると制度が整理できる。単年度主義は予算という授権の有効期間を1会計年度に区切る原則で、毎会計年度の調製と年度開始前の議決(地方自治法第211条第1項)に現れる。会計年度独立の原則(第208条第2項)は、各年度の歳出をその年度の歳入で賄うという充当の規律である。たとえば繰越明許費は、予算の効力を翌年度に延ばす点で単年度主義の例外であると同時に、財源も併せて繰り越すことで年度独立との整合を保つ仕組みと説明できる。継続費・債務負担行為・基金がそれぞれどちらの原則をどの範囲で緩めているかを意識すると、財政運営の道具立ての全体像が見えてくる。
弊害論と緩和装置の系譜
年度末の駆け込み執行、不用額を出すまいとする消化、複数年度の視点を欠く事業設計——単年度主義の弊害は古くから論じられ、制度側も継続費(第212条)・繰越明許費(第213条)・債務負担行為(第214条)・長期継続契約(第234条の3)と緩和装置を積み重ねてきた。国では骨太の方針が単年度主義の弊害是正を掲げ、基金による複数年度執行が広がる一方で、基金は毎年度の議決を経ない分だけ議会統制が緩むという批判も常に伴う。単年度主義は不便の源泉ではなく、毎年度の統制という価値の裏返しである。だから緩和装置の選択は「どこまで統制を手放して機動性を買うか」という交換条件として論じるのが筋であり、駆け込み執行の抑制も、原則の廃止論ではなく執行管理と評価の改善で応じるのが実務の答えになっている。
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