騒音とは、工場や建設作業、自動車などから生じ、人に好ましくないと感じさせる音であって、生活環境に被害を生じるおそれのあるものである。
工場の機械音や深夜の工事の音、走り抜ける車の音は、暮らしの静けさを乱す騒音となる。騒音は典型七公害の一つで、音そのものが直接人の感覚や健康に作用する点で、物質が媒体となる大気汚染や水質汚濁とは性格が異なる。規制の柱は騒音規制法で、著しい騒音を出す工場・事業場の特定施設や、くい打ち機などを使う特定建設作業、自動車騒音を対象に、知事や市町村長が指定する地域ごとに規制基準を定める。とりわけ騒音は、住民の生活実感に直結するため、市町村に寄せられる公害苦情のなかで件数が多く、近隣間のトラブルや事業活動との調整が公害行政の現場で日常的に問題となる。測定や規制基準の運用、苦情処理の最前線を担うのは市町村である。
発生源ごとに分かれる規制の枠組み
騒音規制法は、音の発生源の性質に応じて規制の仕組みを分けている。第一が工場・事業場の騒音で、著しい騒音を出す施設を特定施設として届出させ、知事などが地域・時間帯ごとに定めた規制基準を超えないよう求める。第二が建設作業の騒音で、くい打ち機やさく岩機を使う作業など特に大きな音を伴うものを特定建設作業と定め、作業の届出と、一日の作業時間や日曜・夜間の制限などの基準を課す。建設作業は一時的だが音が大きいため、期間を区切った別建ての規律になっている。第三が自動車騒音で、道路に面する地域の限度を定め、限度を超える場合に都道府県公安委員会への措置要請などにつなげる。このように、定常的な工場、一時的な建設、移動する自動車という発生源の違いが、そのまま規制の組み立ての違いになっている。
苦情件数の多さと近隣紛争
騒音は、公害のなかでも住民が直接「うるさい」と感じて声を上げやすい問題であり、市町村に寄せられる公害苦情のなかで件数が多い類型として知られる。背景には、騒音が音の物理量だけでなく、聞く人の状況や心理によって受け止めが変わる主観性を帯びることがある。同じ音でも昼と夜、平日と休日で迷惑の度合いが変わり、隣家のエアコン室外機や店舗の音、ペットの鳴き声など、規制法の対象外で基準では割り切れない近隣騒音の相談も多い。市町村の公害担当は、規制基準を超えるかどうかの測定や事業者への指導にとどまらず、当事者の言い分を聞いて折り合いを探る調整役を担うことが多い。法的な規制と当事者間の調停的な対応の両面を担うところに、騒音行政の難しさがある。
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