親局とは、防災行政無線の中枢として庁舎などに設置され、子局や移動局に対する放送・通信の起点となる無線局である。市町村防災行政無線(同報系)では、操作卓からの操作で屋外拡声子局と戸別受信機へ一斉放送を送出する。
避難指示を放送する「ボタン」はどこにあるのか——市町村防災行政無線では、庁舎に置かれた親局の操作卓がそれである。ここが機能を失えば、屋外の拡声子局や戸別受信機が無事でも系全体が沈黙する。東日本大震災では庁舎そのものが津波で被災して放送を継続できなくなった例があり、親局を置く階や非常用電源の確保、庁舎外からの代替操作が設計上の論点になった。全国瞬時警報システム(Jアラート)の受信機も親局に接続され、国からの緊急情報は職員の操作なしに自動起動で放送される。平時の定時チャイムや行政放送もここから送出されるため、操作の習熟と保守点検が防災担当課の日常業務になっている。
庁舎被災と「親局を失う」リスク
同報系は親局を頂点とする一対多の構成であり、親局は系全体の単一障害点である。東日本大震災(2011年)では沿岸市町村で庁舎が津波被害を受け、防災行政無線の放送が途絶した例が報告された。この教訓から、親局設備を庁舎の上層階や浸水想定区域外の施設に置く、非常用電源と燃料を確保して停電時も送信を続ける、庁舎が使えない場合に消防本部などの遠隔制御装置から放送できるようにする、といった冗長化が設計の定番になった。耐震性に不安のある旧庁舎では、建て替えを待たずに親局設備だけを先行して移設する判断もありうる。
親局を構成する設備——操作卓と遠隔制御装置
親局は無線送信装置のほか、放送操作を担う操作卓と、離れた拠点からの操作を可能にする遠隔制御装置で構成される。
操作卓
操作卓は、放送の起動、放送先(全域か地区別か)の選択、マイク放送と録音音源の切替、放送予約などを行う親局の操作コンソールである。定時放送の自動運行やJアラート連動の自動放送も操作卓側の設定で制御されるため、設定を誤れば深夜の試験放送のような誤放送につながる。
遠隔制御装置
遠隔制御装置は、消防本部や支所など親局から離れた拠点に置かれ、回線経由で親局を操作して放送を行う装置である。夜間や休日に職員が庁舎へ参集する前でも当直のある消防本部から第一報を放送でき、庁舎被災時の代替操作手段も兼ねる。
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